抵当権が設定されている宅地についての土地区画整理法上の換地処分に伴う清算金債権に対し差押・転付命令を得た者は、抵当権者が物上代位のための差押をする前に右命令を得たとしても、抵当権者から供託しなくてもよい旨の申出がない限り、施行者に対し右清算金の支払を請求することができない。
抵当権が設定されている宅地についての土地区画整理法上の換地処分に伴う清算金債権に対し差押・転付命令を得た者と施行者に対する右清算金支払請求の可否
民法304条,民法371条,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)601条,民事執行法160条,土地区画整理法112条1項
判旨
土地区画整理法112条1項の供託義務がある場合、宅地所有者は施行者に対し清算金の直接支払を請求できず、債権の譲受人や転付債権者も同様に直接支払を請求できない。
問題の所在(論点)
土地区画整理法112条1項の供託義務がある場合において、宅地所有者から清算金債権を承継した転付債権者は、施行者に対して直接の支払を請求することができるか。同条項による直接支払請求権の制限が、債権の承継人にも及ぶかが問題となる。
規範
土地区画整理法112条1項が、宅地に抵当権等がある場合に施行者に清算金の供託を義務付けた趣旨は、抵当権者等による物上代位権の行使を確実にし、その保護を図る点にある。それゆえ、同条項の適用がある場合、宅地所有者は施行者に対し直接清算金の支払を請求することはできず、施行者に対して供託すべきことを請求しうるにとどまる。この債権の内容および効力は、債権が譲渡や転付命令により第三者に移転しても変わらず、抵当権者が差押えを行う前であっても、債権の移転を受けた者が施行者に対し直接支払を請求することはできない。
重要事実
1. Dは、被上告人(施行者)に対し、土地区画整理法104条に基づく換地処分に伴う清算金債権を有していた。2. 本件宅地には、換地処分の公告当時、E信用金庫を根抵当権者とする根抵当権が設定され、登記されていた。3. 上告人は、Dの債権者として、本件清算金債権に対し差押・転付命令を得た。4. 被上告人は、根抵当権者から「供託不要」の申出がなかったため、同法112条に基づき清算金を供託した。5. 上告人は、転付債権者として被上告人に対し、清算金の直接支払を求めて提訴した。
あてはめ
本件では、換地処分公告時に宅地につき根抵当権が存続していたため、法112条1項により被上告人には清算金の供託義務が生じている。この場合、元々の債権者であるDは被上告人に対し供託請求権を有するにとどまり、直接支払請求権を有しない。上告人は差押・転付命令によりDの債権を承継したが、承継される債権自体が「直接支払を請求できない」という内容上の制限を内包している。したがって、抵当権者が物上代位による差押えを行う前であっても、上告人が直接支払を求めることは法112条の抵当権者保護の趣旨に反し、認められない。
結論
上告人は、差押・転付命令を得たとしても、これによって被上告人に対し直接清算金の支払を請求することはできない。
実務上の射程
物上代位が予定されている清算金債権の特殊性を判示したもの。答案上は、債権譲渡や転付命令があった場合でも、法112条に基づく制限が随伴することを論ずる際に用いる。抵当権者による物上代位(民法304条)と一般債権者による差押えの優劣を論ずる前提として、清算金債権自体の法的性質を確定するために有用である。
事件番号: 平成6(オ)1532 / 裁判年月日: 平成8年11月22日 / 結論: 破棄自判
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事件番号: 昭和52(オ)198 / 裁判年月日: 昭和54年3月1日 / 結論: 棄却
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