送達を受けるべき会社が本店の所在地を変更してその旨の商業登記手続を了しているにもかかわらず、送達をすべき場所が知れないときにあたるとしてされた商標法七七条五項、特許法一九一条の規定に基づく公示送達は、その効力を生じない。
商標法七七条五項特許法一九一条の規定に基づく公示送達がその要件を欠き無効とされた事例
商標法77条5項,特許法191条
判旨
特許庁への住所変更届出がない場合でも、商業登記により本店所在地を容易に調査し得る状況であれば、公示送達の要件である「送達をすべき場所が知れないとき」には該当せず、その公示送達は無効である。
問題の所在(論点)
法人が特許庁への住所変更届出を怠っている場合に、商業登記簿の調査をせずに行われた公示送達は、特許法191条1項(公示送達の要件)に適合し有効といえるか。また、有効でない場合の審決取消訴訟の適否および審決の違法性。
規範
公示送達(商標法77条5項、特許法191条1項1号)の要件である「送達をすべき場所が知れないとき」とは、通常の調査を尽くしても送達場所を覚知できない場合を指す。法人の場合、商業登記簿を確認すれば新住所を容易に知ることができる状態にあるならば、たとえ特許庁への変更届出がなされていなくとも、右要件を具備せず、公示送達は効力を生じない。
重要事実
商標登録取消審判の被請求人(商標権者)が、商標登録後に本店所在地を移転した。被請求人は特許庁に対し住所変更の届出を行わなかったが、商業登記上の本店変更登記は完了していた。特許庁は、届出上の旧住所へ書類が届かないことを理由に公示送達を行い、審判請求書の副本送達および取消審決の謄本送達を済ませた。被請求人は、審決謄本の送達を受けていないとして、不変期間経過後に審決取消訴訟を提起した。
あてはめ
本件では、被請求人が商業登記上の変更手続を完了していたため、特許庁が登記簿ないし謄本を調査すれば容易に新住所を知り得たといえる。したがって、「送達をすべき場所が知れないとき」には該当せず、公示送達は無効である。その結果、(1)審決謄本の送達が有効になされていない以上、出訴期間は進行せず、訴えは適法である。(2)審判請求書副本の送達も無効であるため、商標法50条2項に基づく立証・防御の機会を与えないままなされた審決は、重大な手続上の瑕疵があり違法であると評価される。
結論
公示送達の要件を欠くため送達は無効であり、出訴期間は進行しない。また、防御権を侵害する手続上の瑕疵があるため、本件審決は取消を免れない。
実務上の射程
行政手続および審判手続における公示送達の厳格な解釈を示す。相手方が法人の場合、特許庁や行政庁の便宜(届出情報の有無)よりも、登記簿等の公的記録の調査義務が優先される。答案上では、適法な送達の有無から出訴期間の起算点や手続的適法性を論じる際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和53(行ツ)138 / 裁判年月日: 昭和54年3月30日 / 結論: 棄却
商標法四七条の適用のある商標登録無効審判の審判請求書は、特許法一九条にいう「この法律の規定により特許庁に提出する書類その他の物件であつてその提出の期間が定められているもの」にあたる。