会社がその就業規則中に定年年齢を男子六〇歳、女子五五歳と定めた場合において、担当職務が相当広範囲にわたつていて女子従業員全体を会社に対する貢献度の上がらない従業員とみるべき根拠はなく、労働の質量が向上しないのに実質賃金が上昇するという不均衡は生じておらず、少なくとも六〇歳前後までは男女とも右会社の通常の職務であれば職務遂行能力に欠けるところはなく、一律に従業員として不適格とみて企業外へ排除するまでの理由はないなど、原判示の事情があつて、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、右就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法九〇条の規定により無効である。
定年年齢を男子六〇歳女子五五歳と定めた就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分が性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法九〇条の規定により無効とされた事例
憲法14条1項,民法1条ノ2,民法90条,労働基準法第1章総則
判旨
就業規則において女子の定年年齢を男子より低く定めることは、性別のみを理由とした不合理な差別にあたり、公序良俗に反し無効である(民法90条)。企業経営上の観点から差別を正当化する合理的理由がない限り、私的自治の範囲を逸脱するものと解される。
問題の所在(論点)
就業規則において男女で異なる定年年齢を定めることが、性別による不合理な差別として、民法90条(公序良俗)に反し無効となるか。
規範
就業規則における男女別定年制の効力については、当該差別が性別のみによる不合理なものか否かによって判断される。具体的には、職種の内容、労働能力、定年制の現状等に照らし、企業経営上の観点から定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められない場合には、公序良俗(民法90条)に反し無効となる(憲法14条1項の趣旨参照)。
重要事実
事件番号: 昭和44(オ)204 / 裁判年月日: 昭和45年7月28日 / 結論: 棄却
会社が、企業運営の刷新を図るため従業員に対し職場諸規則の厳守、信賞必罰の趣旨を強調していた時期に、従業員が、午後一一時二〇分頃他人の居宅に故なく入り込み、住居侵入罪として処罰されたとしても、右行為が会社の業務等に関係のない私生活の範囲内で行なわれたものであり、その受けた刑罰は罰金二五〇〇円の程度にとどまり、会社における…
上告会社(日産自動車)の就業規則には、男子の定年を60歳、女子の定年を55歳とする規定が存在した。女子従業員の担当職務は相当広範囲にわたり、各個人の能力等の評価を離れて全体として貢献度が低いとは断定できない状況にあった。また、女子について労働の質量が向上しないのに賃金が上昇するという不均衡が生じている証拠もなかった。さらに、60歳前後までは男女ともに通常の職務遂行能力に欠けるところはないという実態が存在した。
あてはめ
まず、女子従業員の職務範囲が広範であり、努力次第で貢献度を上げうる職種が多数含まれていることから、女子全体を貢献度の低い従業員と一律に断定する根拠はない。次に、賃金と労働質量の不均衡という経済的合理性も認められない。さらに、男女ともに60歳前後までは職務遂行能力に欠けるところはない。したがって、個人の能力差に応じた取扱いは格別、一律に女子のみを早期退職させる合理的理由は認められない。本件規定は、専ら女子であることのみを理由とする不合理な差別であるといえる。
結論
女子の定年年齢を男子より低く定めた就業規則の規定は、性別のみによる不合理な差別であり、民法90条により無効である。
実務上の射程
私法上の法律関係に憲法の平等原則を間接適用する(民法90条を媒介とする)際のリーディングケースである。特に、企業内での男女差別が問題となる事案において、抽象的な経営判断の自由を強調するのではなく、職務実態や労働能力といった客観的事実に即して合理的理由の有無を厳格に審査する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和43年4月9日 / 結論: 棄却
不当労働行為にあたる解雇は無効である。
事件番号: 昭和36(オ)1226 / 裁判年月日: 昭和38年6月21日 / 結論: 棄却
従業員が会社の承認を得ないで公職に就任したときは懲戒解雇する旨の就業規則条項は、労働基準法第七条の規定の趣旨に反し無効であると解すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)942 / 裁判年月日: 昭和36年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】雇用契約の合意解約について、当時の社会情勢(レッドパージ等)があったとしても、意思表示の任意性が否定されず、公序良俗違反や虚偽表示、強迫にも該当しない場合には、当該合意解約は有効である。 第1 事案の概要:上告人は、共産党員またはその同調者であることを理由に一方的な解雇(レッドパージ)を受けた旨を…