従業員が会社の承認を得ないで公職に就任したときは懲戒解雇する旨の就業規則条項は、労働基準法第七条の規定の趣旨に反し無効であると解すべきである。
従業員が会社の承認を得ないで公職に就任したときは懲戒解雇する旨の就業規則条項の効力。
労働基準法7条,労働基準法92条1項
判旨
労働基準法7条が公の職務の執行を保障している趣旨に鑑み、労働者が会社の承認を得ずに公職に就任したことを理由に懲戒解雇に処する旨の就業規則の規定は無効である。
問題の所在(論点)
使用者の承認なく公職に就任した労働者を懲戒解雇に処する旨の就業規則の規定は、労働基準法7条の趣旨に照らし有効か。また、業務阻害のおそれがある場合に懲戒解雇が可能か。
規範
労働基準法7条は、労働者に対し、労働時間中における公民としての権利の行使および公の職務の執行を保障している。この規定の趣旨に照らせば、公職の就任を使用者の承認にかからしめ、承認を得ずに就任した者を企業秩序違反に対する制裁罰である懲戒解雇に処する旨の規定は無効である。仮に公職就任が会社業務の遂行を著しく阻害するおそれがある場合であっても、普通解雇の可否は格別、懲戒解雇をすることは許されない。
重要事実
労働者である被上告人は、昭和34年4月の十和田市議会議員選挙に当選し、上告人会社の承認を得ずに市議会議員に就任した。これに対し会社は、従業員が会社の承認を得ずに公職に就任したときは懲戒解雇する旨の就業規則の規定に基づき、被上告人を懲戒解雇に処した。
事件番号: 昭和42(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和43年4月9日 / 結論: 棄却
不当労働行為にあたる解雇は無効である。
あてはめ
本件就業規則は、単なる届出にとどまらず公職就任を会社の承認にかからしめ、違反者には制裁罰である懲戒解雇を課している。しかし、労基法7条は公民の権利行使等を保障しているため、このような制裁規定は同条の趣旨に反して無効である。会社側は、議員就任が業務遂行を著しく阻害するおそれがあると主張するが、そのような事情があったとしても、懲戒解雇という制裁の手段をもって臨むことは許されない。
結論
本件懲戒解雇の根拠となる就業規則の条項は無効であり、これに基づく懲戒解雇も無効である。
実務上の射程
公職就任を理由とする懲戒処分は一律に否定される。答案上、労基法7条の「保障」の強さを示す事例として活用できる。なお、判旨は普通解雇の可能性を留保しており、業務阻害の程度が著しい場合の労働契約解消(普通解雇)の適否とは峻別して理解する必要がある。
事件番号: 昭和36(テ)4 / 裁判年月日: 昭和36年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正当な労働組合活動を理由とする不当労働行為としての解雇は、憲法28条が団結権を保障する現行法体系下において公序良俗に反し無効である。 第1 事案の概要:使用者が労働者に対し、労働組合活動を理由とした解雇(不当労働行為)を行った。これに対し労働者が解雇の無効を主張したところ、使用者は、解雇無効の判断…
事件番号: 昭和41(オ)1306 / 裁判年月日: 昭和46年6月15日 / 結論: 棄却
甲の被用者である乙につき、第三者丙が乙の正当な組合活動を嫌忌してこれを解雇することを甲に要求し、甲が丙の意図を認識しながら乙を解雇したときは、その解雇が、甲において、丙の要求を容れて乙を解雇しなければ自己の営業の続行が不可能になるとの判断のもとに、右要求を不当なものとしながら、やむなくしたものであつても、甲に不当労働行…
事件番号: 平成16(受)918 / 裁判年月日: 平成18年10月6日 / 結論: 破棄自判
従業員が職場で上司に対する暴行事件を起こしたことなどが就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとして,使用者が捜査機関による捜査の結果を待った上で上記事件から7年以上経過した後に諭旨退職処分を行った場合において,上記事件には目撃者が存在しており,捜査の結果を待たずとも使用者において処分を決めることが十分に可能であったこと,…
事件番号: 昭和38(オ)1098 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: その他
一、公共企業体等労働関係法第一八条の法意は、同法第一七条違反の行為をした職員について、法の定める職員の身分保障に関する規定にかかわらず、解雇することができるとするにあり、解雇するかどうか、その他どのような措置をとるかについては、職員のした違反行為の態様・程度に応じ、公共企業体等の合理的な裁量に委ねる趣旨と解するのが相当…