甲の被用者である乙につき、第三者丙が乙の正当な組合活動を嫌忌してこれを解雇することを甲に要求し、甲が丙の意図を認識しながら乙を解雇したときは、その解雇が、甲において、丙の要求を容れて乙を解雇しなければ自己の営業の続行が不可能になるとの判断のもとに、右要求を不当なものとしながら、やむなくしたものであつても、甲に不当労働行為をする意思がなかつたとはいえず、その解雇は不当労働行為を構成するものというべきである。
第三者の強要による解雇と不当労働行為の成否
労働組合法7条
判旨
第三者からの強要による不利益取扱いであっても、使用者がその意図を認識しつつ応じた場合には、不当労働行為意思が認められる。この場合、経営維持の必要性は不利益取扱いの動機と別個独立の事情とはいえず、当該解雇は労働組合法7条に違反し無効となる。
問題の所在(論点)
第三者(取引先)からの強要によって行われた解雇において、使用者に不当労働行為意思(労働組合法7条1号)が認められるか。また、経営維持のためのやむを得ない措置であるとの主導的動機が不当労働行為意思を否定するか。
規範
労働組合法7条1号の「不利益取扱い」が成立するためには、使用者に不当労働行為意思(組合活動を理由として不利益を与える意思)が認められることを要する。第三者による強要がある場合でも、使用者が当該第三者の嫌忌の意図を認識し、それに直結する形で不利益取扱いの意思内容を形成したといえる場合には、不当労働行為意思の存在を肯定すべきである。この点、強要に応じなければ経営が破綻するという事情は、嫌忌の意図と表裏一体の関係にあり、正当な人員整理等の別個独立の動機とは解されない。
重要事実
上告会社(使用者)は、取引先である訴外D木材市場から、被上告人(労働者)が正当な組合活動を行ったことを理由として、被上告人を解雇するよう強要された。上告会社は、この要求が不当なものであると認識していたが、解雇に応じなければD木材市場からの協力が得られず、営業の続行が不可能になると判断し、やむなく被上告人を解雇した。
事件番号: 昭和36(オ)1226 / 裁判年月日: 昭和38年6月21日 / 結論: 棄却
従業員が会社の承認を得ないで公職に就任したときは懲戒解雇する旨の就業規則条項は、労働基準法第七条の規定の趣旨に反し無効であると解すべきである。
あてはめ
本件において、上告会社は訴外会社の解雇要求が被上告人の正当な組合活動を理由とするものであることを十分に認識していた。その上で、営業続行が不可能になるという判断から解雇に及んでいるが、これは訴外会社の嫌忌の意図が上告会社の意思に直結し、そのまま意思内容を形成したものといえる。営業続行の不能という事情は、強要の事実を具体化したものに過ぎず、組合活動に対する嫌忌と表裏一体である。したがって、事業合理化のための人員整理のような別個独立の正当な動機とは認められず、上告会社に不当労働行為意思がなかったとはいえない。
結論
本件解雇は労働組合法7条に違反する不当労働行為であり、公序良俗に反し無効である。
実務上の射程
「第三者の強要(いわゆるショップ制類似の事態を含む)」に基づく不利益取扱いの事案における規範として活用できる。不当労働行為意思の有無を判断する際、経営上の困難を理由とする抗弁を「嫌忌の意図と表裏一体」として排斥する論理は、司法試験における不当労働行為の成否を論ずる際の重要な判断枠組みとなる。
事件番号: 昭和42(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和43年4月9日 / 結論: 棄却
不当労働行為にあたる解雇は無効である。
事件番号: 昭和32(オ)1130 / 裁判年月日: 昭和35年9月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働者が正当な理由なく健康診断を拒否し、それによって労務提供が不能となった場合、民法536条1項により報酬請求権を失い、雇用関係存続の確認を求める訴えの利益も否定される。 第1 事案の概要:米駐留軍に雇用されていた労働者(上告人)が、肺浸潤により約90日間の有給休暇を取得した後、治癒証明書を提出し…