一、公共企業体等労働関係法第一八条の法意は、同法第一七条違反の行為をした職員について、法の定める職員の身分保障に関する規定にかかわらず、解雇することができるとするにあり、解雇するかどうか、その他どのような措置をとるかについては、職員のした違反行為の態様・程度に応じ、公共企業体等の合理的な裁量に委ねる趣旨と解するのが相当である。 二、昭和三一年三月当時、日韓間海底線第二ケーブル第三区間の朝鮮海峡に出動を要請された日本電信電話公社所属の海底線布設船の出航について、当時その航海および海底線修理作業に通常予想される危険と異なる軍事上の危険がないとはいえず、また、それまで労使間の交渉が妥結してから出航するのが例であつた等判示のような事情のもとにおいて、右公社の職員によつて組織される組合の本社支部の役員が右布設船の出航を二五時間余遅延させたというだけの理由によつて、右役員について行なわれた解雇は、妥当性・合理性を欠き、右公社に認められた合理的な裁量権の範囲をいちじるしく逸脱したものとして、無効と解すべきである。
一、公共企業体等労働関係法第一八条の法意 二、公共企業体等労働関係法第一七条違反を理由とする解雇が無効とされた事例
公共企業体等労働関係法17条,公共企業体等労働関係法18条
判旨
海底線布設船の出航に伴う客観的な危険が存在し、労使交渉が未妥結の状況下でなされた軽微な争議行為に対し、裁量権を逸脱してなされた解雇は無効である。
問題の所在(論点)
客観的な危険が存する状況下で行われた軽微な争議行為を理由とする解雇が、裁量権の範囲を逸脱し無効となるか。
規範
公労法17条に違反する行為をした職員の解雇(同法18条)は、当然に地位を失わせるものではなく、職員の労働基本権を保障する憲法の精神に基づき、違反行為の態様・程度に応じた合理的な範囲内に留めるべきである。したがって、懲戒権者の裁量権の範囲を著しく逸脱し、妥当性・合理性を欠く解雇は無効となる。
重要事実
事件番号: 昭和42(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和43年4月9日 / 結論: 棄却
不当労働行為にあたる解雇は無効である。
日本電信電話公社の海底線布設船D丸の出航に関し、目的地が韓国の「李ライン」内であり、当時の日韓情勢や撃沈声明から客観的危険が存在した。組合員である上告人らは、危険手当等の労働条件を巡る団体交渉が未妥結であることを理由に出航を一時阻害し、予定より25時間遅延させた。公社はこれを公労法17条の争議行為禁止違反として上告人らを解雇した。
あてはめ
朝鮮海峡には米海軍の護衛が必要なほどの客観的危険が存在し、これは通常の海上作業に伴う範囲を超えていた。上告人らの行為は出航を25時間余遅延させたに過ぎず、最終的にD丸は出航して任務を完了しており、公社に実害が生じた事実は認められない。また、交渉妥結後に出航する慣行があったことに照らせば、十分な説得を欠いたまま解雇という最重の処分を選択することは、違反の程度に比して著しく均衡を失している。
結論
本件解雇は裁量権の範囲を著しく逸脱したものとして無効であり、雇用関係は存続する。
実務上の射程
公共企業体等における争議行為禁止規定(公労法17条)に違反した場合であっても、一律に解雇が正当化されるわけではなく、行為の違法性の程度と処分の均衡を個別具体的に検討すべきとする。特に生命の危険が関わる特殊な労働環境下での拒絶行為に対する評価において、実務上重要な指針となる。
事件番号: 昭和53(オ)414 / 裁判年月日: 昭和56年4月9日 / 結論: 棄却
(省略) (補足意見がある。)
事件番号: 昭和36(オ)1226 / 裁判年月日: 昭和38年6月21日 / 結論: 棄却
従業員が会社の承認を得ないで公職に就任したときは懲戒解雇する旨の就業規則条項は、労働基準法第七条の規定の趣旨に反し無効であると解すべきである。
事件番号: 昭和43(オ)499 / 裁判年月日: 昭和50年4月25日 / 結論: 破棄差戻
労働組合から除名された労働者に対し使用者がユニオン・ショップ協定に基づく労働組合に対する義務の履行として行う解雇は、右除名が無効な場合には、他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、無効である。