労働組合から除名された労働者に対し使用者がユニオン・ショップ協定に基づく労働組合に対する義務の履行として行う解雇は、右除名が無効な場合には、他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、無効である。
除名が無効な場合におけるユニオン・ショップ協定に基づく解雇の効力
労働組合法第2章,労働組合法第3章,民法627条
判旨
ユニオン・ショップ協定に基づく解雇義務は、労働者が有効に組合員資格を喪失した場合にのみ生じる。したがって、前提となる除名が無効な場合には、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り、当該解雇は権利濫用として無効となる。
問題の所在(論点)
ユニオン・ショップ協定に基づき行われた解雇において、その前提となる労働組合による除名処分が無効である場合、当該解雇は客観的に合理的な理由を欠くものとして解雇権の濫用(労働契約法16条等)となるか。
規範
1. 解雇権の行使が、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認できない場合は、権利濫用(労働契約法16条参照)として無効となる。 2. ユニオン・ショップ協定(以下「US協定」)は、労働者の組合加入・残留を間接的に強制する制度であり、その正当な機能を果たす範囲で効力が認められる。 3. したがって、US協定に基づき使用者が解雇義務を負うのは、労働者が「有効に」脱退・除名されて資格を喪失した場合に限定される。 4. 除名が無効な場合、使用者は解雇義務を負わず、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り、当該解雇は客観的合理的理由を欠き無効となる。
重要事実
1. 被上告会社は、労働組合との間で「組合を脱退し、または除名された者を解雇する」とのUS協定を含む労働協約を締結していた。 2. 組合は、上告人に対し「離籍(実質は除名)」を通知し、会社に対してもその旨を通知した。 3. 会社は、右US協定の規定に基づき、上告人を解雇する旨の意思表示をした。 4. 上告人は、除名が無効であり、それに伴う本件解雇も無効であると主張したが、原審は除名の有効性を審理せずに、除名の効力は解雇に影響しないとして請求を排斥した。
事件番号: 昭和42(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和43年4月9日 / 結論: 棄却
不当労働行為にあたる解雇は無効である。
あてはめ
1. 会社が上告人を解雇した理由は、US協定に基づく義務の履行である。 2. しかし、US協定に基づく解雇義務は、有効な除名等がなされた場合にのみ発生するものである。 3. 本件において、上告人に対する「離籍(除名)」が無効であるならば、会社にはUS協定上の解雇義務が生じていないことになる。 4. 解雇義務がないにもかかわらずなされた解雇は、義務の履行としての正当性を欠き、他に解雇を正当化する特段の事情がない限り、客観的に合理的な理由を欠くといえる。
結論
除名が無効であれば、US協定に基づく解雇も特段の事情がない限り権利濫用として無効となる。原審は除名の効力を審理すべきであったため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
US協定に基づく解雇の有効性を争う際、前提となる組合による除名処分の効力(手続の正当性や懲戒事由の有無)を、会社に対する解雇無効訴訟の中で論じることができる。また、「特段の事由」による解雇の正当化を認める余地は残しているが、実務上は極めて限定的である。
事件番号: 昭和62(オ)515 / 裁判年月日: 平成元年12月21日 / 結論: 棄却
ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法九〇条により無効である。
事件番号: 昭和45(オ)982 / 裁判年月日: 昭和49年3月15日 / 結論: 棄却
会社の従業員が、いわゆるa事件に加担して、日本国とアメリカ合衆国との問の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反の罪により逮捕、起訴され、これが広く報道されたため、会社の社会的評価に悪影響があつたとしても、その犯行の動機、目的が破廉恥なものでなく、これに対する有罪判決の刑も罰金二〇〇〇円にとどまり、かつ、会…
事件番号: 昭和35(オ)942 / 裁判年月日: 昭和36年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】雇用契約の合意解約について、当時の社会情勢(レッドパージ等)があったとしても、意思表示の任意性が否定されず、公序良俗違反や虚偽表示、強迫にも該当しない場合には、当該合意解約は有効である。 第1 事案の概要:上告人は、共産党員またはその同調者であることを理由に一方的な解雇(レッドパージ)を受けた旨を…
事件番号: 昭和44(オ)204 / 裁判年月日: 昭和45年7月28日 / 結論: 棄却
会社が、企業運営の刷新を図るため従業員に対し職場諸規則の厳守、信賞必罰の趣旨を強調していた時期に、従業員が、午後一一時二〇分頃他人の居宅に故なく入り込み、住居侵入罪として処罰されたとしても、右行為が会社の業務等に関係のない私生活の範囲内で行なわれたものであり、その受けた刑罰は罰金二五〇〇円の程度にとどまり、会社における…