税関長により公売に付された収容貨物をその買受人等を経由して取得した最終消費者等が右貨物に存した瑕疵により損害を被つた場合において、右損害の発生につき税関長に過失があるとするためには、税関長が、当該貨物に構造上の欠陥等の瑕疵のあることを現に知つたか、又は税関長の通常有すべき知識経験に照らすと容易にこれを知ることができたと認められる場合であつて、右貨物を公売に付するときには、これが最終消費者によつて、右瑕疵の存するままの状態で取得される可能性があり、しかも合理的期間内において通常の用法に従つて使用されても、右瑕疵により最終消費者等の損害の発生することを予見し、又は予見すべきであつたと認められ、さらにまた、税関長において、最終消費者等の損害の発生を未然に防止しうる措置をとることができ、かつ、そうすべき義務があつたにもかかわらず、これを懈怠したと認められることが必要である。
税関長により公売に付された収容貨物を取得した最終消費者等が右貨物に存した瑕疵により損害を被つた場合において右損害の発生につき税関長に過失があるとするための要件
民法709条,民法715条,国家賠償法1条1項,関税法84条1項
判旨
税関長による収容貨物の公売において、最終消費者に損害が生じた場合の国家賠償法上の責任は、税関長が貨物の欠陥を現に知り又は容易に知り得、かつ結果発生を予見できた場合に限り、例外的に認められる。
問題の所在(論点)
関税法に基づき収容貨物を公売に付した税関長が、当該貨物の構造上の欠陥により損害を被った最終消費者に対し、国家賠償法1条1項上の注意義務(製造・販売業者と同等の安全配慮義務)を負うか。
規範
税関長は製造・輸入業者と同等の専門的知識を有することを要求されないため、注意義務違反が認められるには、①廃棄可否等の検査過程で、構造上の欠陥を現に知ったか、通常有すべき知識経験に照らし容易に知り得たこと、②合理的期間内に通常用法で使用されれば損害が発生することを予見(可能)であったこと、③損害防止措置を講じ得たのに怠ったことが必要である。なお、公売の買受人に瑕疵補修義務を負わせる等の措置を講じれば、結果回避義務を尽くしたといえる。
重要事実
神戸税関長は、輸入業者が不明なバドミントンセットを関税法に基づき収容し、性状検査の上で公売に付した。これを買い受けた業者等を経て、最終消費者の叔母が購入し幼児に贈与した。幼児がラケットを使用中、接着剤等で固定されていなかった鉄製シャフトがグリップから抜け飛び、遊戯相手である弟の左目に当たり負傷させた。原審は、税関長を輸入業者に準ずる地位にあるとして注意義務違反を認めたため、国が上告した。
あてはめ
税関長は多種多様な貨物を扱うが、専門的知識を有すべき法的根拠はなく、輸入業者と同視できない。本件ラケットは鉄パイプをプラスチックの応力のみで保持する構造であったが、これが「容易に知り得た」欠陥か、また公売後の「事故発生を予見すべき」であったかは慎重に判断されるべきである。また、税関長には貨物を補修する権限や義務はないため、公売自体を差し控えるのではなく、買受人に対し補修義務を課す等の措置で足りると解される。原審はこれらの要件を十分に検討せず予見可能性を認めた点で、審理不尽・理由不備がある。
結論
税関長は製造・輸入業者と同一の安全配慮義務を負うものではなく、特定の主観的・客観的予見事情が認められない限り、公売による損害につき賠償責任を負わない。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
公権力の行使(公売)に伴う付随的な私法的評価に関する射程を示す。行政庁が私法的取引の端緒を作った場合でも、その職務の性質上、専門業者と同等の高度な注意義務を一律に課すことは否定しており、国賠法上の過失認定における「職務上の義務」の具体化として活用できる。
事件番号: 平成6(オ)548 / 裁判年月日: 平成9年7月15日 / 結論: 棄却
一 執行官は、現況調査を行うに当たり、通常行うべき調査方法を採らず、あるいは、調査結果の十分な評価、検討を怠るなど、その調査及び判断の過程が合理性を欠き、その結果、現況調査報告書の記載内容と目的不動産の実際の状況との間に看過し難い相違が生じた場合には、目的不動産の現況をできる限り正確に調査すべき注意義務に違反したものと…