寄附行為の一環としてされた財産出捐行為が、財団法人設立関係者の通謀に基づいてされた虚偽仮装のものであるときは、民法九四条一項の規定を類推適用して該寄附行為を無効とするのが相当である。
財団法人の設立を目的とする寄附行為と民法九四条一項の規定の類推適用
民法39条,民法94条1項
判旨
財団法人設立のための寄附行為が、設立関係者の通謀により、真実の出捐意思がなく形式を整える目的で仮装された場合には、民法94条1項を類推適用して無効となる。
問題の所在(論点)
相手方のない単独行為である財団法人設立の寄附行為について、出捐者と設立関係者が通謀して虚偽の意思表示を行った場合に、民法94条1項を類推適用してその効力を否定できるか。
規範
財団法人の寄附行為は相手方のない単独行為であるが、その実質を考察し、財産出捐行為が設立関係者との通謀に基づき、真実の出捐意思を欠く仮装の行為である場合には、民法94条(虚偽表示)の規定を類推適用して、当該寄附行為を無効と解すべきである。
重要事実
上告人は財団法人を設立するために寄附行為(財産出捐行為)を行ったが、実際には上告人と法人の設立関係者との間で通謀があり、上告人には真実に財産を出捐する意思がなかった。単に財団法人の設立手続としての形式を整える目的で、一定の財産を出捐する旨を仮装したにすぎない事案である(具体的な通謀の内容や法人の種類等は判決文からは不明)。
あてはめ
本件の寄附行為は、形式的には有効な設立行為に見えるが、事実関係を実質的に考察すると、出捐者において真実の財産出捐意思が欠如している。また、この欠如は出捐者一人の主観にとどまらず、設立関係者との「通謀」に基づき「仮装」されたものである。このように相手方のない単独行為であっても、実質的に虚偽表示と同様の構造を有し、かつ特定の関係者との通謀が認められる場合には、民法94条1項の類推適用に必要な基礎を欠くものではないといえる。
結論
本件寄附行為は、民法94条の類推適用により無効である。
実務上の射程
相手方のない単独行為には原則として民法94条1項は適用されないが、本判決は、財団法人設立のような「設立関係者」という事実上の相手方が存在する場面において類推適用の余地を認めた。答案上は、虚偽表示の要件である「相手方との通謀」が直接満たされない場合であっても、実質的に通謀と同視できる関係者が存在する場合には類推適用の構成をとる指針となる。
事件番号: 昭和36(オ)194 / 裁判年月日: 昭和36年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】動機の錯誤については、その動機が相手方に表示され、法律行為の内容とされた場合に限り、要素の錯誤として取り扱うことができる。 第1 事案の概要:上告人は、訴外人物が刑事訴追を受けないことを「絶対の条件」として債務引受の意思表示を行った。しかし、この「刑事訴追を受けないこと」という動機は、意思表示の際…