いわゆる減額再更正処分につき、納税者は、その取消を求める訴の利益を有しない。
いわゆる減額再更正処分の取消を求める訴の利益の有無
国税通則法26条,国税通則法29条2項,行政事件訴訟法9条
判旨
弁護士の顧問料が事業所得か給与所得かは、自己の計算と危険における独立性の有無や、指揮命令下の労務提供といった具体的態様に基づき判断すべきである。また、更正処分後に減額再更正がなされた場合、訴えの対象は減額された当初の更正処分であり、再更正処分自体の取消しを求める訴えの利益はない。
問題の所在(論点)
1. 減額再更正処分がなされた場合、取消訴訟の対象となるべき処分は何か(更正処分の吸収関係)。 2. 弁護士が受け取る顧問料は、所得税法上の「事業所得」と「給与所得」のいずれに該当するか。
規範
1. 課税処分の対象:更正処分後の減額再更正は、当初処分の税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分である。したがって、納税者は減額された当初の更正処分の取消しを訴求すべきであり、再更正処分につき訴えの利益はない。 2. 所得区分:事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性・有償性を有し、反復継続して遂行する意思と社会的地位が客観的に認められる業務から生ずる所得をいう。対して、給与所得とは雇用契約等に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価をいい、空間的・時間的な拘束、継続的・断続的な労務提供の有無を重視して判断する。
重要事実
弁護士である上告人は、自己の法律事務所を構え数人の使用人を雇い、複数の会社と口頭で顧問契約を締結していた。顧問業務は電話や事務所での随時相談が主であり、勤務時間や場所の定めはなく、特定の会社への定時専従もなかった。各会社は顧問料を弁護士報酬として扱い、10%の源泉徴収のみを行い、社会保険料の控除や賞与の支給はしていなかった。上告人は、当初更正処分を受けた後に減額再更正を受けたが、その再更正処分の取消しを求めて出訴した。
事件番号: 平成12(行ツ)13 / 裁判年月日: 平成13年7月13日 / 結論: 破棄自判
りんご生産等の事業を営むことを目的とする民法上の組合の組合員がりんご生産作業の専従者として同作業に従事して労務費名目で金員の支払を受けた場合において,上記金員は作業時間を基礎として日給制でその金額が決定され原則として毎月所定の給料日に現金を手渡す方法で支払われ,専従者は同作業の管理者の指示に従って作業に従事し,その作業…
あてはめ
1. 再更正処分は当初更正処分の実質的な変更であり、減額部分にのみ法的効果を及ぼすため、訴えの対象は当初更正処分となる。 2. 上告人の業務態様をみるに、複数の顧問先を持ち、特定の場所に拘束されず、自己の事務所で電話対応等を行う形態は、独立した弁護士業務の一態様といえる。指揮命令下での労務提供や時間的・空間的拘束といった給与所得特有の性質は認められず、自己の計算と危険において独立して営まれている。また、支払側も社会保険や賞与の対象としておらず、雇用関係を前提とした給付ではない。したがって、本件顧問料は事業所得としての性質を具備している。
結論
1. 昭和42年分再更正処分の取消請求については訴えの利益がなく不適法である(却下)。 2. 本件顧問料は事業所得に該当するため、減額された当初更正処分は適法である(棄却)。
実務上の射程
減額再更正における「訴えの対象」に関する原則的な判例であるとともに、所得区分(事業所得vs給与所得)の判断基準を「自己の計算と危険」「独立性」「指揮命令・拘束性」というキーワードで定式化した重要判例である。実務上、弁護士以外でも独立性の高い専門職の報酬区分が争点となる事案で広く射程を有する。
事件番号: 平成17(行ヒ)96 / 裁判年月日: 平成18年11月16日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
事件番号: 平成16(行ツ)23 / 裁判年月日: 平成16年11月2日 / 結論: 棄却
1 所得税法56条は,居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が居住者と別に事業を営む場合であっても,その居住者の営む事業に従事したことなどの同条所定の要件が満たされる限り,適用される。 2 配偶者その他の親族が居住者と別に事業を営む場合にその居住者の事業所得等の金額の計算に所得税法56条を適用してされた課税処分は,憲…
事件番号: 平成16(行ヒ)141 / 裁判年月日: 平成17年1月25日 / 結論: 棄却
米国法人の子会社である日本法人の代表取締役が,親会社である米国法人から親会社の株式をあらかじめ定められた権利行使価格で取得することができる権利(いわゆるストックオプション)を付与されてこれを行使し,権利行使時点における親会社の株価と所定の権利行使価格との差額に相当する経済的利益を得た場合において,上記権利は,親会社が同…
事件番号: 平成16(行ヒ)86 / 裁判年月日: 平成18年4月25日 / 結論: その他
1 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付したにもかかわらず,同税理士が上記行為をして納税資金を着服したものであり,納税者において同税理士が隠ぺい,仮装行為を行うことを容易に予測し得たということはできず…