民訴法一九八条二項にいう仮執行により被告の受けた損害とは、仮執行と相当因果関係にある財産上及び精神上のすべての損害をいう。
民訴法一九八条二項にいう仮執行により被告の受けた損害の意義
民訴法198条2項
判旨
民訴法260条2項(旧198条2項)にいう仮執行により被告が受けた損害とは、原告が未確定判決に基づき仮執行という特別の利益を享受することとの公平を図る趣旨から、仮執行と相当因果関係にある財産上及び精神上の全損害を指す。
問題の所在(論点)
民事訴訟法260条2項(旧198条2項)に基づく仮執行の宣言が失効した場合の損害賠償義務において、賠償の対象となる「損害」の範囲に精神上の損害(慰謝料)が含まれるか。
規範
民訴法260条2項(旧198条2項)の趣旨は、判決未確定の間に仮執行という特別な利益を得た原告に対し、判決変更時に被告が被った不利益を回復させる義務を課すことが公平にかなう点にある。したがって、同項にいう「損害」とは、特定の範囲に限定されるものではなく、仮執行と相当因果関係にある財産上および精神上の全ての損害をいうものと解する。
重要事実
原告(上告人)が被告に対し、仮執行宣言付判決に基づき強制執行を実施した。しかし、その後の本案訴訟の上訴審において仮執行の宣言が変更(失効)されたため、被告は仮執行によって生じた損害の賠償を求めた。原審は、この損害に精神上の損害(慰謝料)も含まれると判断したため、原告がこれを不服として上告した。
あてはめ
仮執行制度は原告に早期の権利実現を認めるものであるが、後にその根拠となった判決が変更された場合には、その不利益を被告に負担させ続けるのは公平に反する。本件において、仮執行によって被告に財産上の損害のみならず精神的な苦痛が生じた場合、それが仮執行という事実と相当因果関係にある限り、公平の観点から原告はその全損害を補填すべきである。したがって、精神上の損害も同条項の賠償範囲に含まれると解される。
結論
民訴法260条2項にいう「損害」には、仮執行と相当因果関係にある限り、精神上の損害も含まれる。
実務上の射程
仮執行宣言の失効に伴う原状回復・損害賠償請求(いわゆる260条の申立て)において、損害の範囲を財産的損害に限定せず広く認める基準を示したものである。答案上は、相当因果関係の有無を検討する前提として、精神的損害も含まれ得ることを示す規範として活用する。無過失責任であることを踏まえつつ、損害の範囲については不法行為法と同様の相当因果関係論で画定することを明示する際に有用である。
事件番号: 昭和25(オ)179 / 裁判年月日: 昭和28年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮執行宣言付判決に基づき強制執行がなされた後、本案判決が取り消された場合であっても、不法行為(民法709条)が成立するためには、別件訴訟の提起および仮執行について債権者に故意または過失が認められることを要する。 第1 事案の概要:本件の上告人は、被上告人が過去に提起した別件訴訟において仮執行宣言付…