他に資力のない債務者が、生計費および子女の大学進学に必要な費用を借用するため、その所有の家財衣料等を担保に供する等原審の確定した事実関係(原判決理由参照)のもとでは、その担保供与行為は、担保物の価格が借入額を超過したり、借財が右目的以外の不必要な目的のためにする等特別の事情のないかぎり、詐害行為は成立しない。
債務者が生計費および子女の教育費を借用するため貸主に対し唯一の動産を譲渡担保に供した行為が詐害行為にあたらないとされた事例
民法424条
判旨
無資力の債務者が生計維持や教育費調達のためにした財産処分行為は、対価が不当に廉価であるなど特別の事情がない限り、詐害行為にあたらない。
問題の所在(論点)
無資力の債務者が生活維持や教育費の調達を目的として行った財産処分行為が、民法424条1項の詐害行為に該当するか。
規範
無資力の債務者が、生計費及び子女の教育費に充てるため、その所有の家財等を売却処分し、又は金員借入れのために担保に供する等の生活を営むための財産処分行為は、原則として詐害行為を構成しない。ただし、①売買価格が不当に廉価であること、②担保物の価格が借入額を著しく超過すること、③借財が生活を営む以外の不必要な目的であること、等の特別の事情がある場合には、詐害行為が成立し得る。
重要事実
債務者D・E夫妻は、他に資産を有していなかったが、生計費として10万円、長女の大学進学費用として6万円を被上告人から借り入れた。その際、担保として時価10万円に満たない家財等の物件を譲渡担保に供した。債権者である上告人は、この譲渡担保設定行為が債権者の一般担保を減少させるものであるとして、詐害行為取消権を行使した。
あてはめ
本件における債務者の行為は、家族の生計費および子女の大学教育費を確保するという、憲法上の生存権にも関わる切実な生活上の必要性に基づいたものである。提供された担保物件の価格は約10万円であり、借入総額16万円を下回っていることから、担保提供が不当に過大であったとはいえない。また、目的も生活維持に直結する正当なものであり、不必要な目的も認められない。したがって、一般担保の減少という事実があっても、詐害行為としての違法性を欠くというべきである。
結論
本件譲渡担保設定行為には特別の事情が認められないため、詐害行為は成立しない。
実務上の射程
本判決は、詐害行為取消権の行使を制限する「実質的詐害性」の判断枠組みを示したものである。答案上では、債務者の窮状や処分の必要性(生存権的配慮)を強調しつつ、対価の相当性や目的の正当性を検討する際の「特別の事情」を否定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和45(オ)306 / 裁判年月日: 昭和45年11月19日 / 結論: 棄却
物件の価額と同額の債務のためにした代物弁済が、判示のように、債務者において、同人に倒産の気配があることを察知した一債権者から、債務の支払かこれに代わる商品の交付を求められ、これを拒絶していたものの、引き続き深更に及ぶ強硬な要求に屈して、やむなく債権者が右物件を持ち去るに任せたというのであるときは、右代物弁済は詐害行為に…