一 修理工場を設けて自動車の修理業を営む会社が自動車の修理によつて得た修理料債権は、民法第一七三条第二号所定の居職人の仕事に関する債権にあたらない。 二 留置物の第三取得者も、民法第二九八条第三項により留置権の消滅を請求できる。
一 自動車の修理料債権が民法第一七三条第二号所定の居職人の仕事に関する債権にあたらないとされた事例。 二 留置物の第三取得者は民法第二九八条第三項により留置権の消滅を請求できるか。
民法173条,民法298条
判旨
留置権者が民法298条1項・2項の保管義務に違反した場合、留置物の所有権を取得した第三取得者も、同条3項に基づき留置権の消滅請求権を行使することができる。
問題の所在(論点)
留置権者が民法298条1項または2項の規定に違反したとき、留置物の所有権を取得した第三取得者は、同条3項に基づく留置権の消滅請求権を行使することができるか。
規範
留置権者が善管注意義務(民法298条1項)や承諾なき使用・賃貸・担保提供の禁止(同条2項)に違反した場合、債務者のみならず、留置物の所有者となった第三取得者も、同条3項に基づく留置権の消滅請求をなし得る。
重要事実
自動車修理業者である被上告人は、Cから依頼された自動車の修理代金債権に基づき、当該車両を留置していた。上告人は、Cから本件車両の所有権を取得した第三取得者である。上告人は、被上告人に保管義務違反があるとして、民法298条3項に基づき留置権の消滅請求を行った。原審は、消滅請求権は債務者のみが行使できるものであり、債務者ではない第三取得者による請求は無効であるとして、義務違反の有無を判断せずに上告人の主張を退けた。
あてはめ
留置権は目的物の占有を継続して債務の弁済を間接的に強制する権利であるが、所有権を有する者にとっては、その利用を制限される重大な負担となる。民法298条3項が保管義務違反を理由とする消滅請求を認めた趣旨は、留置権者に適正な保管を担保させる点にある。そうであれば、直接の債務者ではないとしても、現に所有権を有し留置権による制限を受けている第三取得者に対して消滅請求を認めるのが相当である。原審は上告人が第三取得者であることを認定しながら、義務違反の有無を審理せず請求を排斥した点において、法の解釈適用を誤っている。
結論
留置物の第三取得者も民法298条3項の消滅請求権を行使できるため、保管義務違反の存否を審理すべきであるとして、原判決を破棄し差し戻した。
実務上の射程
留置権における消滅請求権(298条3項)の行使主体を「所有者一般」に広げる射程を持つ。答案上は、留置権の対抗を受ける第三取得者の防御手段として、義務違反の事実(承諾なき目的物の使用等)がある場合に本判例を引用して消滅請求の可否を論じる。
事件番号: 昭和49(オ)157 / 裁判年月日: 昭和49年7月18日 / 結論: 棄却
代金完済に至るまで目的物の所有権を売主に留保し買主に対する所有権の移転は代金完済を停止条件とする旨の合意がされている動産の割賦払約款付売買契約において、代金完済に至るまでの間に買主の債権者が目的物に対し強制執行したときは、売主又は売主から目的物を買い受けた第三者は、所有権を主張し、第三者異議の訴によつて右執行を排除する…
事件番号: 昭和50(オ)1148 / 裁判年月日: 昭和51年6月17日 / 結論: 棄却
農地買収・売渡処分が買収計画取消判決の確定により当初にさかのぼつて効力を失つた場合において、被売渡人から右土地を買い受けた者が土地につき有益費を支出していても、その支出をした当時、買主が被買収者から買収・売渡処分の無効を理由として所有権に基づく土地返還請求訴訟を提起されており、買主において買収・売渡処分が効力を失うかも…