代金完済に至るまで目的物の所有権を売主に留保し買主に対する所有権の移転は代金完済を停止条件とする旨の合意がされている動産の割賦払約款付売買契約において、代金完済に至るまでの間に買主の債権者が目的物に対し強制執行したときは、売主又は売主から目的物を買い受けた第三者は、所有権を主張し、第三者異議の訴によつて右執行を排除することができる。
動産の割賦払約款付売買契約において代金完済に至るまで所有権を留保した売主又は右売主から目的物を買い受けた者と第三者異議の訴
民法555条,民訴法549条1項
判旨
所有権留保特約付の売買において、代金完済前に買主の債権者が目的物を差し押さえた場合、売主またはその承継人は所有権に基づき執行の排除を求めることができる。
問題の所在(論点)
所有権留保特約が付された動産売買において、代金完済前に買主の一般債権者が当該動産を差し押さえた場合、売主側の所有権を「執行を妨げる権利」として主張できるか。
規範
動産の割賦払約款付売買契約において、代金完済まで売主に所有権を留保し、買主への所有権移転を代金完済という停止条件にかからしめる旨の合意がある場合、売主(またはその承継人)は所有権に基づき第三者異議の訴え(民事執行法38条1項)を提起し、買主の債権者による強制執行の排除を求めることができる。
重要事実
DはEに対し、代金完済まで所有権を留保する特約の下で土運船を売却した。Eが代金未払のまま和議開始申立をしたため、Dは特約に基づき契約を解除して船の返還を受け、これをFに、さらにFが被上告人に転売した。その後、Eの債権者である上告人が、債務名義に基づき本件土運船を差し押さえたため、被上告人が所有権に基づき強制執行の排除を求めて提訴した。
あてはめ
本件では、D・E間の契約により、代金完済に至るまで土運船の所有権はDに留保される旨の有効な合意がなされていた。買主Eが代金を完済する前に和議開始の申立を行い、Dが解除権を行使して目的物を取り戻した時点で、所有権は依然として売主側に存在し、被上告人はその承継人として正当に所有権を取得している。したがって、いまだ代金が完済されず所有権が買主に移転していない以上、買主の債権者である上告人による差し押さえに対し、被上告人は所有権を対抗できるといえる。
結論
被上告人は、取得した本件土運船の所有権に基づき、上告人の強制執行の排除を求めることができる。
実務上の射程
所有権留保の対外的効力を肯定した基本判例である。答案上は、所有権留保が単なる担保権ではなく、代金完済という停止条件が付された実体法上の所有権であることを根拠に、第三者異議の訴えの適格を基礎づける際に活用する。
事件番号: 昭和53(オ)1463 / 裁判年月日: 昭和56年12月17日 / 結論: 棄却
一 譲渡担保権者は、特段の事情がない限り、第三者異議の訴えによつて目的物件に対し譲渡担保権設定者の一般債権者がした強制執行の排除を求めることができる。 二 譲渡担保権者は、目的物件につき自己の債権者のために更に譲渡担保権を設定したのちにおいても、第三者異議の訴えによつて目的物件に対し原譲渡担保権設定者の一般債権者がした…