特定物の売買契約における売主のための保証人は、特に反対の意思表示のないかぎり、売主の債務不履行により契約が解除された場合における原状回復義務についても、保証の責に任ずるものと解するのが相当である。
売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任。
民法446条,民法447条,民法545条
判旨
売買契約における売主の保証人は、特に反対の意思表示のない限り、債務不履行により契約が解除された場合における売主の原状回復義務についても保証の責めに任ずる。
問題の所在(論点)
売買契約の解除によって生じる原状回復義務(民法545条1項)が、主たる債務の保証債務の範囲(民法447条1項)に含まれるか。特に、特約がない場合に当然に保証の対象となるかが問題となる。
規範
特定物の売買における売主の保証は、通常、売主の債務不履行に起因して売主が買主に対して負担すべき債務を担保する趣旨でなされる。したがって、保証人は、債務不履行による損害賠償義務のみならず、特に反対の意思表示がない限り、契約解除に伴う原状回復義務(代金返還義務等)についても保証の責めを負う。
重要事実
上告人はDから畳建具を15万円で購入し代金を支払った。被上告人はDの本件債務を保証した。その後、Dの債務不履行を理由に売買契約が解除されたため、上告人は被上告人に対し、保証債務の履行として代金の返還を求めた。
事件番号: 昭和27(オ)1024 / 裁判年月日: 昭和29年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物の引渡義務の履行不能に基づく代替賠償(損害賠償)を請求する場合、その賠償額は目的物自体の価格により算定すべきであり、請負代金や税金相当額を当然に控除すべきではない。 第1 事案の概要:被上告人(注文者)は、上告人(請負人)に対し、製織委託契約(請負契約)に基づき製織品の引渡を請求した。しかし、目…
あてはめ
本件において、被上告人はDの売主としての債務を保証している。売買契約における保証は、単に本来の給付義務を担保するだけでなく、不履行時の清算的債務をも担保する合意と解するのが当事者の通常の合理的意思に合致する。したがって、解除による原状回復義務を保証しない旨の特約がなされた等の特別の事情がない限り、被上告人はDの代金返還義務について保証責任を免れない。
結論
被上告人は保証の責めに任ずべきである。原審が特約の有無を検討せずに保証責任を否定したことは、保証契約の解釈を誤った違法がある。
実務上の射程
契約上の地位全般を保証する趣旨であると解釈することで、解除後の清算関係まで保証の射程を及ぼす。答案では、保証債務の範囲に関する原則的な判断枠組みとして、447条1項の解釈において用いる。反対の特約がない限り解除による原状回復義務も含まれるという原則(推定規定に近い運用)を示す際に有用である。
事件番号: 昭和25(オ)94 / 裁判年月日: 昭和27年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において、代理人が本人(売主)の承諾を条件として契約を締結した場合、その承諾がなされない限り契約の効力は本人に帰属しない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の代理人である訴外Dとの間で、本件売買契約が締結された。その際、売主である被上告人の承諾を得ることを条件とする旨の合意がなされていた…
事件番号: 昭和29(オ)847 / 裁判年月日: 昭和30年8月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】寄託を委任したからといって、当然に寄託関係の終了に伴う返還を受ける権限まで付与されたとは解されず、代理権限なき者への返還は債務不履行を構成する。また、倉庫業者として当然払うべき注意義務を尽くさない限り、受取人に代理権限があると信じたことについて正当な理由があるとはいえない。 第1 事案の概要:債権…