債権仮差押と差押とが競合する場合、当該債権につき取立命令を得た差押債権者に対する第三債務者の弁済については、民法第四八一条は適用されず、右弁済は仮差押債権者その他配当に与かるべき者全員に対してもその効力を有するものと解すべきである。
債権仮差押と差押とが競合する場合当該債権につき取立命令を得た差押債権者に対する第三債務者の弁済と民法第四八一条の適用の有無。
民法481条,民訴法602条,民訴法621条,民訴法750条3項
判旨
同一債権につき仮差押えと差押え・取立命令が競合する場合、第三債務者が取立債権者へ行った弁済は、仮差押債権者を含む全員に対して効力を有し、債権は消滅する。
問題の所在(論点)
同一債権に対し仮差押執行後に他の債権者が差押・取立命令を得て弁済を受けた場合、第三債務者は仮差押債権者に対して免責を主張できるか。民法481条1項の「支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたとき」に該当し、二重払いの義務を負うか。
規範
取立命令を得た差押債権者は、執行裁判所の授権に基づく一種の取立機関として、競合する仮差押債権者その他配当にあずかるべき者全員のために取立を行う立場にある。したがって、第三債務者が取立命令に応じて行う弁済は、仮差押債権者を含む全員に対して有効であり、当該債権は弁済により消滅する。この場合、民法481条(支払差止を受けた第三債務者の弁済)の規定は適用されない。
重要事実
上告人(仮差押債権者)は、Dが被上告人(第三債務者)に対して有する工事代金債権を仮差押えした。その後、補助参加人(差押債権者)が同債権を差し押さえ、取立命令を得た上で被上告人から全額の弁済を受けた。上告人はさらにその後に同債権の一部について差押・転付命令を得たため、民法481条1項に基づき、被上告人に対して二重の支払いを求めて提訴した。
あてはめ
本件では、補助参加人が取立命令に基づき被上告人から弁済を受けている。取立債権者は一種の取立機関として仮差押債権者らのためにも取立を行う性質を有するため、この弁済により工事代金債権は適法に消滅したといえる。仮差押債権者である上告人は、取立金からの配当等を受けるべき地位に立つにとどまり、既に消滅した債権について転付命令を得ることはできない。また、取立債権者への弁済は「自己の債権者」への弁済ではないため、民法481条の適用場面ではないと解される。
結論
第三債務者の弁済は有効であり、債権は消滅している。上告人が得た転付命令は無効であり、二重払いの請求は認められない。
実務上の射程
仮差押えと後発の取立命令が競合した場合の第三債務者の保護を認めた判例。答案上は、仮差押債権者の地位を「配当等を受ける地位」に限定し、第三債務者の供託義務までは課さない実務運用を支える理論として活用する。民法481条の「自己の債権者」に取立債権者が含まれないことを明示する際にも重要である。
事件番号: 昭和46(オ)521 / 裁判年月日: 昭和49年10月24日 / 結論: 棄却
第三債務者が債権仮差押命令の送達を受ける前に債務者に対し債務支払のために小切手を振り出していた場合には、右送達後にその小切手が支払われたとしても、第三債務者は右債務の消滅を仮差押債権者に対抗することができる。