債権に対し仮差押が執行されても、仮差押債務者は、当該債権につき、給付訴訟を提起・追行し、かつ、無条件の勝訴判決を得ることができる。
債権に対する仮差押の執行と当該債権についての給付訴訟
民訴法226条,民訴法750条
判旨
金銭債権に対する仮差押えがなされた場合であっても、仮差押債務者は第三債務者に対し当該債権の給付訴訟を提起し、無条件の勝訴判決を得ることができる。
問題の所在(論点)
金銭債権が仮差押えされた場合、当該債権の債権者(仮差押債務者)は、第三債務者に対して給付訴訟を提起・追行し、勝訴判決を得ることができるか。また、その判決に引換給付等の条件を付すべきか。
規範
仮差押えの目的は、債務者の財産現状を保存し金銭債権の執行を保全することにあり、その効力は右目的のために必要な限度においてのみ認められる。したがって、債権の仮差押えによって、仮差押債務者は取立・譲渡等の処分ができず、第三債務者は支払を禁止されるが、これらは仮差押債権者に対抗しえないことを意味するにとどまる。ゆえに、仮差押債務者は、第三債務者に対し給付訴訟を提起・追行する権限を失わず、無条件の勝訴判決を得ることができる。
重要事実
被上告人(債権者)が、上告人ら(債務者)に対して貸金請求訴訟を提起し追行していたところ、その訴訟継続中に、被上告人の債権者である訴外Dにより、本件貸金債権を対象とする仮差押命令が発せられ、その執行が完了した。上告人らは、当該仮差押えにより被上告人の請求は認められるべきではない旨を主張して争った。
あてはめ
本件では、訴訟継続中に被上告人の有する貸金債権が仮差押えされたが、仮差押えは執行を保全する制度であり、債務者の訴訟追行権まで奪うものではない。仮差押債務者が勝訴判決を得ることで、債務名義の取得や時効中断が可能となり、これは仮差押債権者にとっても債権を保存する結果となり利益に合致する。第三債務者の二重払いの危険については、判決に基づく強制執行の段階で仮差押えの事実を執行障害として提示することで阻止しうるため、判決段階で条件を付す必要もない。したがって、仮差押えは本件請求に影響を及ぼさない。
結論
債権が仮差押えされていても、仮差押債務者は第三債務者に対し給付を求めることができ、無条件の勝訴判決を得ることができる。
実務上の射程
本判決は、債権が仮差押え(または差押え)された状態での給付訴訟の可否について確立した規範を示すものである。答案上は、当事者適格や訴えの利益、あるいは実体法上の請求権の有無が争われる場面で引用し、処分禁止効が「仮差押債権者への対抗不能」という相対的な効力にとどまることを理由に、無条件の勝訴判決を肯定する論理を展開する。
事件番号: 昭和38(オ)555 / 裁判年月日: 昭和40年7月20日 / 結論: 棄却
仮差押中の債権につき別の債権者が差押をした場合、当該債権につき取立命令を得た差押債権者に対する第三債務者の弁済については、民法第四八一条は適用されず、右弁済は仮差押債権者その他配当に与かるべき者全員に対してもその効力を有するものと解すべきである。