一 国税徴収法第一七八条により民法第四二四条を準用する場合において、同条第一項但書にいわゆる受益者または転得者の善意の挙証責任は受益者または転得者に存するものと解すべきである。 二 甲に対して債務二七〇余万円を負担する乙が、少なくともそのうち一二〇万円の未払額あることを知りつつ、唯一の財産である価格二〇〇万円相当の不動産につき、丙に対する元本一三〇万円、利息日歩三銭、期限一年後なる消費貸借債務の担保とするため、所有権を一応丙に譲渡し、弁済期に返済しないときは所有権は完全に丙に帰属することとし、その趣旨で登記も丙名義としておくいわゆる代物弁済的譲渡担保契約をすることは、特段の事情がない限り、甲に対して民法第四二四条の詐害行為を構成する。
一 国税徴収法第一七八条と受益者または転得者の善意の挙証責任 二 いわゆる代物弁済的譲渡担保が詐害行為を構成するとされた事例
国税徴収法178条,民法424条
判旨
詐害行為取消権における受益者または転得者の善意の挙証責任は、受益者または転得者自身が負う。また、債権額を大幅に超える価値を有する不動産を譲渡担保に供する行為は、詐害行為取消権の対象となる。
問題の所在(論点)
1. 詐害行為取消権(民法424条1項)において、受益者または転得者の善意(抗弁)の挙証責任はどちらが負うか。\n2. 債権額を上回る価値の不動産を譲渡担保に供し、帰属清算的な合意を行うことは、詐害行為に該当するか。
規範
民法424条1項但書における受益者または転得者の「善意」については、受益者または転得者側にその挙証責任があると解すべきである。また、債務者が特定の債権者に対し、債権額に比して著しく過大な価値を有する不動産を譲渡担保に供し、不履行時に所有権を確定的に移転させる契約は、特段の事情がない限り、他の一般債権者を害する詐害行為に該当する。
重要事実
事件番号: 昭和32(オ)916 / 裁判年月日: 昭和35年3月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産売却の委託において、受託者が委任状を取得する際に欺罔行為があったとは認められず、委託者が特定の条件の充足を重視して自ら売却を決意し委任状を交付した場合には、民法96条1項の詐欺による取消しは認められない。 第1 事案の概要:上告人(委託者)は、a町の土地建物の処分について、訴外Dの同意がある…
債務者は、元本130万円(利息日歩3銭、期限1年後)の貸金債務の担保として、価額合計200万円に及ぶ土地及び建物をいわゆる譲渡担保に供した。その契約内容は、期限に返済しないときは当該不動産の所有権譲渡を確定的なものとするというものであった。国税徴収法178条(民法424条を準用)に基づき、この行為が詐害行為として取り消されたため、受益者側が善意の主張および行為の正当性を争い上告した。
あてはめ
1. 挙証責任について、法文の構造上、債権者は債務者の詐害の意思を立証すれば足り、受益者が取消しを免れるためには自らの善意を立証する必要がある。\n2. 本件では、130万円の債務に対し200万円という過大な価値を有する物件を担保に供している。不履行時に所有権を確定的に移転させる合意は、債務者の責任財産を不当に減少させるものといえ、客観的に一般債権者を害する行為と評価できる。したがって、原審がこれを詐害行為と認定した判断は正当である。
結論
受益者らの善意の挙証責任は受益者自身にある。また、本件譲渡担保契約は詐害行為取消の対象となる法律行為に該当する。
実務上の射程
詐害行為取消権の法的性質が形成権的性格を有することを背景に、受益者の主観的要件(善意)が抗弁であることを明確にした。答案上、受益者の善意については債権者側で主張立証する必要がない点に注意する。また、代物弁済予約や譲渡担保が過大である場合の詐害性の判断基準として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)553 / 裁判年月日: 昭和39年7月10日 / 結論: 破棄差戻
詐害行為として不動産売却行為を取り消し所有権取得登記の抹消を受益者に請求する訴は、受益者が当該不動産上に第三者のために右不動産の価格を上廻る被担保債権額について抵当権を設定している場合には、特段の事情のないかぎり、許されない。
事件番号: 昭和37(オ)272 / 裁判年月日: 昭和38年11月15日 / 結論: 棄却
第三者の弁済につき当事者が反対の意思を表示したかどうかの主張立証の責任は、その表示ありとして第三者弁済の無効を主張する者の側にある。
事件番号: 昭和36(オ)170 / 裁判年月日: 昭和36年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が無権利者に対して有する妨害排除請求権としての登記抹消請求権等は、債権者代位権の目的とすることが可能である。不動産の真実の所有者は、架空の登記名義人に対し、所有権に基づき実体に合致するよう移転登記または抹消登記を求めることができる。 第1 事案の概要:債務者Dは国税を滞納していた。Dの所有財…