夫婦間の合意で、夫の買い入れた土地の登記簿上の所有名義人を妻としただけでは、右の土地を妻の特有財産と解すべきではない。
登記簿上の所有名義人と特有財産。
民法762条1項
判旨
夫婦の一方が自己の経営する事業の収益金を原資として取得した財産について、当該収益金の帰属が明確である場合には、民法762条2項の共有推定規定を適用する余地はない。
問題の所在(論点)
夫婦の一方が営む事業の収益によって取得された財産について、民法762条2項の共有推定規定を適用すべきか、あるいは特有財産と解すべきか。
規範
民法762条2項は、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産をその共有と推定するものである。したがって、財産取得の原資となった収益金の帰属が、夫婦の一方の事業によるものであると具体的に認定できる場合には、同項の適用は否定され、当該財産は特有財産となる。
重要事実
被上告人は旅館を経営しており、その経営から生じた収益金をもって本件土地の払い下げを受けた。これに対し上告人は、当該収益金は夫婦のいずれに属するか明らかでないから、民法762条2項により本件土地は共有と推定されるべきであり、また贈与の事実も認められるべきであると主張して上告した。
事件番号: 昭和31(オ)583 / 裁判年月日: 昭和32年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】組合の共同事業の用に供する目的で買い受けられた土地は、登記名義のいかんに関わらず組合財産として組合員の共有に帰する。また、組合員の合意や承認により持分が放棄された場合、当該土地は特定の者の単独所有に帰する。 第1 事案の概要:被上告人、上告人、訴外Dの3名は、アイスケーキ製造販売業を共同で営むこと…
あてはめ
原審において、本件土地は被上告人が自ら経営する旅館の収益金をもって自ら払い下げを受けたと認定されている。この認定によれば、取得原資となった収益金は被上告人に属することが明確であり、いずれの配偶者に属するか不明な状態にはない。また、贈与の事実についても証拠の取捨選択により否定されていることから、特有財産としての性格が維持される。
結論
本件土地は被上告人の特有財産であり、民法762条2項を適用する余地はない。上告を棄却する。
実務上の射程
夫婦別産制(民法762条1項)を前提としつつ、立証責任の分配として共有推定(同条2項)が機能する局面を限定した。答案上は、財産の帰属を基礎付ける具体的事実(資金源や取得名義)が立証されている場合には、安易に共有推定に逃げるのではなく、1項の特有財産として処理すべきことを示す指針となる。
事件番号: 昭和32(オ)612 / 裁判年月日: 昭和36年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法94条2項の適用における善意・無過失の要否について、原審が認定した事実に基づき、相手方が善意かつ無過失であれば保護されることを前提に上告を棄却した。 第1 事案の概要:上告人が、被上告人に対し、何らかの権利関係(詳細は判決文からは不明)につき虚偽の表示や悪意の存在を主張して争った事案。原審は、…
事件番号: 昭和32(オ)742 / 裁判年月日: 昭和32年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】文書上の印影が本人または代理人の印章によるものと認められるときは、民事訴訟法228条4項(旧326条)により、その文書は真正に成立したものと推定される。また、農地の贈与契約は、農地法による知事の許可があった日に確定的に効力を生じる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間で農地の贈与契約が締結され…
事件番号: 昭和36(オ)784 / 裁判年月日: 昭和39年1月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の農地か否かの判定は土地の現状により判断されるべきであり、一部の土地が農地法上の制限を受ける場合であっても、他の土地が山林であり、それのみを取得することで売買の目的を達成できるのであれば、契約の効力は妨げられない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で、本件一(1)(2)の土地を含む…
事件番号: 昭和34(オ)425 / 裁判年月日: 昭和36年8月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権の取得時効の要件である「所有の意思」の有無は、占有取得の原因となった権原の性質により客観的に決定される。他人の留守番として土地を使用する権原は、その性質上、所有の意思を認め得ない他主占有にあたる。 第1 事案の概要:占有者Dは、被上告人から本件土地の「留守番」として使用することを許され、これ…