選挙に関する新聞記事の記載が公職選挙法第一四八条第一項但書に違反しても、その違反は同法第二〇五条にいう選挙の規定違反ではなく、選挙無効の原因にはならない。
選挙に関する新聞記事と選挙の効力
公職選挙法148条1項,公職選挙法205条
判旨
公職選挙法205条1項の「選挙の規定」違反とは、原則として選挙管理機関の管理手続に関する規定違反を指し、個別の選挙運動に関する規定違反は、選挙人全般が自由な判断による投票を妨げられ選挙の自由公正が失われたと認められる特段の事情がない限り、選挙無効の原因とはならない。
問題の所在(論点)
新聞記事による候補者の得票予想の掲載が、公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定」違反に該当し、選挙無効の原因となるか。また、かかる記事によって「選挙の自由公正」が害されたといえるか。
規範
1. 公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定」違反とは、主として選挙管理の任にあたる機関の管理手続に関する規定違反を指す。2. 個別の選挙運動(選挙管理委員会の行うものを除く)に関する規定違反は、刑事罰による遵守が期待されており、原則として選挙無効の原因とはならない。3. ただし、厳格な意味での選挙管理手続違反に当たらない場合であっても、選挙の自由公正が失われ、選挙人全般が自由な判断によって投票することが妨げられたような場合には、選挙が無効となる余地がある。
重要事実
衆議院議員総選挙に際し、新聞紙上に「各党派支部長らが見た皮算用」と題する記事が掲載された。当該記事には、各候補者の得票数予想が各党支部責任者の談話として掲載され、その中には上告人の得票数が少ないことを予想するものも含まれていた。上告人は、この記事が選挙の結果に影響を及ぼしたとして、同法148条1項但書(新聞紙等の報道・評論の自由の制限)違反等を理由に選挙無効(同法205条1項)を訴えた。
事件番号: 昭和30(オ)970 / 裁判年月日: 昭和31年2月14日 / 結論: 棄却
選挙に際し政党が発表宣伝した政策がかりに実現不可能、無責任なものであつても、そのために選挙を無効とすべきではない。
あてはめ
1. 本件記事の掲載が仮に同法148条1項但書に違反するとしても、それは選挙運動に関する規定違反にすぎず、刑事上の責任の原因(同法235条の2第1号)とはなっても、直ちに205条1項の「選挙の規定」違反には当たらない。2. また、一新聞紙の記事掲載という事実のみをもってしては、選挙人全般が自由な判断による投票を妨げられ、選挙の自由公正が失われたと解することは到底できない。
結論
本件新聞記事の掲載は、公職選挙法205条1項の選挙無効の原因には当たらない。したがって、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
選挙無効訴訟において「選挙の規定」違反の意義を定義した重要判例である。答案上は、選挙管理機関のミス等の「管理手続違反」と、第三者や候補者による「選挙運動規定違反」を区別する際に用いる。後者であっても「選挙の自由公正が失われた」といえるレベルであれば無効原因になり得るという例外の枠組みもセットで論じる必要がある。
事件番号: 昭和30(オ)919 / 裁判年月日: 昭和31年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法205条1項に基づく選挙無効の原因は、原則として選挙の管理執行に関する規定の違反を指し、個々の選挙人による違法行為は直ちにこれに含まれない。 第1 事案の概要:判決文からは詳細な事案(特定の選挙の種類や具体的な違反行為の内容)は不明であるが、選挙人による個々の規定違反が行われた場合に、そ…
事件番号: 昭和42(行ツ)20 / 裁判年月日: 昭和42年4月15日 / 結論: 棄却
選挙人、候補者、選挙運動者等の選挙の取締りないし罰則違反の行為は、公職選挙法第二〇五条第一項にいう選挙の規定違反にあたらないものと解するのが相当である。