大赦により有罪の判決言渡が効力を失つても、公職選挙法第二五二条により、大赦前被選挙権を有しなかつたことは、恩赦法第一一条にいわゆる既成の効果である。
公職選挙法第二五二条による被選挙権の停止と恩赦法第一一条にいわゆる既成の効果
公職選挙法252条,恩赦法3条,恩赦法11条
判旨
議員が被選挙権を欠くことによる失職は、地方自治法上の「職」のみならず「議員としての地位・身分」をも失わせる。また、大赦前に既に生じていた被選挙権の喪失は恩赦法11条の「既成の効果」に該当し、大赦によって遡及的に回復することはない。
問題の所在(論点)
1. 地方自治法127条による「失職」の効果として、議員の「職」と「地位・身分」を区別できるか。 2. 大赦施行前に既に生じていた被選挙権の喪失という事態が、恩赦法11条の「既成の効果」に該当し、大赦後も維持されるか。
規範
1. 地方自治法127条にいう「職を失う」とは、法文上も理論上も議員の地位と職を区別する理由はなく、議員たる地位・身分そのものを喪失することを意味する。 2. 恩赦法11条にいう「有罪の言渡に基く既成の効果」とは、恩赦の効力発生前に既に確定的に生じている法的効果を指し、被選挙権の喪失期間のうち大赦の日までに経過した期間については、大赦によってもその効力は変更されない。
重要事実
訴外Dは、昭和26年の群馬県議会議員選挙に当選したが、それ以前の昭和25年に公職選挙法違反の略式命令が確定し、同法252条により5年間の被選挙権停止期間中であった。その後、昭和27年4月28日に大赦が施行されたが、行政当局はDが当選当時から地方自治法127条により失職していたものとして、次点者Eを繰り上げ当選とした。これに対し、Dは失職しても議員の地位は失わないこと、及び大赦により被選挙権喪失の効果は否定されるべきことを主張して争った。
事件番号: 昭和31(オ)817 / 裁判年月日: 昭和32年5月31日 / 結論: 棄却
不在者投票の受理不受理を投票管理者が決定しないため投票が不法に効力を失わしめられた場合においては、その数と当選者の得票数と最高位落選者の得票数との差を比較して、当該当選者の当選の効力を決すべきである。
あてはめ
1. 地方自治法127条の適用において、議員の「職」と「地位」を区別すべき根拠は法文上も理論上も存在しない。したがって、被選挙権を欠く以上、Dは当然に議員たる地位を失っている。 2. Dは昭和25年の略式命令確定から昭和27年の大赦の日まで、現に被選挙権を有していなかった。この事実は恩赦法11条にいう「既成の効果」といわざるを得ない。Dが事実上議員の職務を行っていたという違法な事実があったとしても、それによって既成の効果であるとの判断は左右されない。
結論
Dは当選当時から議員の地位を失っており、大赦によってもその失職の効果は消滅しないため、次点者の繰り上げ当選を認めた原判断は正当である。
実務上の射程
議員の失職に伴う身分の喪失について当然失職の原則を確認したものである。答案上は、恩赦の遡及効の限界(恩赦法11条)を論じる際の基準として、「既成の効果」を「既に確定的に生じた不利益」と解釈する文脈で活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)260 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
候補者にB和夫とD一男とがある場合に「B一男」と記載された投票は、B和夫に対する有効投票と解するを相当とする。
事件番号: 昭和32(オ)193 / 裁判年月日: 昭和32年5月24日 / 結論: 棄却
県議会議員選挙で「小畑」、「オバタ」、「おばた」と記載されている投票は、同時に行われた知事選挙の候補者中に小畑Dがある場合には、議員候補者小幡谷Cに対する有効投票とは認められない。
事件番号: 昭和31(オ)1037 / 裁判年月日: 昭和32年3月5日 / 結論: 棄却
一 同一選挙区内にDなる人物が実在し、同人はその地方で小学校教員、わら工品等の販売業をした後新聞販売業に転じ、町議会議員に当選し、また衆議院議員の選挙運動にも関係し、相当名が知られている場合は、「D」と記載された投票は候補者Eに対する有効投票とは認められない。 二 候補者Eの家の当主は代々「F」を名のり、現に候補者の実…
事件番号: 昭和34(オ)497 / 裁判年月日: 昭和35年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】村議会議長の選挙における決定無効確認の訴えについて、議員の任期満了により議員たる資格を喪失した場合には、もはや当該訴えを維持する訴えの利益が失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和31年3月17日に施行された被上告村議会の議長選挙において、Dを当選者と定めた議会の決定を不服とし、異議を却下する…