一 現況が農地であつて、国鉄駅より三〇〇米内外のところにあり、幹線道路に沿つてはいるが、附近の状況は、小規模の工場、住宅が散在しているにすぎず、四囲の環境上、近い将来非農地化が必至と認められる程度に至らないものは、自作農創設特別措置法第五条第五号に当らないとしてこれを買収することは違法ではない。 二 一時賃貸の原因が賃貸人の側のやむを得ない事情に基かない場合には、自作農創設特別措置法第五条第六号の適用はない。
一 自作農創設特別措置法第五条第五号にあたらないとされた一事例 二 一時賃貸の原因が賃貸人の側のやむを得ない事情に基かない場合と自作農創設特別措置法第五条第六号の適用の有無
自作農創設特別措置法5条5号,自作農創設特別措置法5条6号
判旨
農地買収における除外指定の要否は行政庁の合理的な裁量に委ねられるが、四囲の環境上、近い将来非農地化が必至と認められる程度に至らない農地について指定を行わずに買収を実施したとしても、裁量権の逸脱・濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
行政庁(農地委員会)による「近く土地使用目的を変更することを相当とする農地」の指定不作為が、裁量権の逸脱・濫用として違法となるか。また、その判断基準はいかなるものか。
規範
行政庁が「近く土地使用目的を変更することを相当とする農地」としての指定を行うか否かは、無条件な自由裁量に委ねられるものではない。しかし、四囲の環境に照らし、近い将来において非農地化が必至と認められる程度に至らない農地については、当該指定を行わずに買収を実施したとしても、裁量権の範囲を逸脱・濫用するものとして違法となることはない。
重要事実
上告人の所有地は、駅より300メートル内外に位置し、幹線道路に沿っていた。しかし、付近の状況は小規模な工場や住宅が散在している程度であり、いわゆる工場地帯と呼べるまでには至っていなかった。農地委員会は、当該土地を「土地使用目的の変更を相当とする農地」に指定することなく、買収処分を実施した。これに対し、上告人は指定を行わなかったことの違法を主張して争った。
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…
あてはめ
本件土地は、駅に近く幹線道路沿いという利便性はあるものの、周囲に工場や住宅が点在するにとどまり、客観的に見て「近い将来において非農地化が必至」と言えるほどの環境変化が生じているとは認められない。このような状況下においては、農地委員会が土地利用目的の変更が相当であると判断しなかったとしても、その裁量判断が合理性を欠くとはいえず、法的な義務に違反して指定を怠ったものとは評価できない。
結論
行政庁が除外指定を行わずに本件土地を買収したことは適法である。裁量権の範囲を超えた違法な処分とは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
行政法における「裁量権の逸脱・濫用」の具体例として活用できる。特に、法令上「〜できる」とされる除外規定の適用不作為が争われる場面において、客観的な周囲の状況(本件では非農地化の必至性)を基準に裁量の合理性を判断する枠組みとして答案に引用可能である。
事件番号: 昭和29(オ)258 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
遡及買収指示手続に違法があつても、このため、右指示に基き定められた農地買収計画が違法となることはない。
事件番号: 昭和24(オ)129 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が買収計画への異議に対し法定期間内に決定を行わず、事実上計画から除外したとしても、正式な決定がない限り買収しないことが法律上確定したとはいえず、再度同一の買収計画を立てることは直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年3月になされた農地買収計画に対し異議を申し立てた。農…
事件番号: 昭和24(オ)322 / 裁判年月日: 昭和26年12月28日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第一五条第一項第二号により宅地を買収するについては、その宅地が売渡農地の附属地として利用せられて来たものであることを要しないが、売渡農地の経営に必要な宅地であることを要する。