消費賃借の借主が、貸主主張の金額につき消費賃借の成立したことを認める旨陳述したとしても、一方において、賃借の成立に際し天引の行われたことを主張しているときは、該陳述を自白と認めることはできない。
「消費賃借の成立を認める」との陳述と自白
民訴法257条
判旨
金銭消費貸借の成立額に関する当事者の陳述は、具体的経緯に基づく法律上の意見の陳述にすぎず、裁判上の自白には当たらない。
問題の所在(論点)
利息天引きがある場合に、金いくらの消費貸借が成立したかという当事者の陳述が「裁判上の自白」に該当し、不要証効および撤回制限が認められるか。
規範
裁判上の自白とは、自己に不利益な事実を認める陳述をいうが、具体的法律要件たる事実に基いてなされる法律効果の判断、すなわち「法律上の意見」については、当事者の陳述が一致しても裁判所を拘束しない。したがって、法律上の意見の陳述が変更された場合、自白の取消に関する法理(民事訴訟法179条等)は適用されない。
重要事実
上告人は、第一審において公正証書記載の13万円の消費貸借成立を認めた。しかし、第二審では、実際には1万9500円が利息として天引きされたため、消費貸借は差引額の11万500円について成立したと主張を変更した。第一審の段階でも、訴状等において天引きの事実は記載されていた。
あてはめ
天引きが行われた場合に幾らの額につき消費貸借の成立を認めるかは、交付額等の事実に基づき導かれる法律上の判断である。本件では、13万円の成立を認める旨の陳述も、11万500円の成立を認める旨の陳述も、利息天引きという事実上の経過に基づく法律上の意見にすぎない。そうであれば、法律上の効果は当事者の一致した陳述に左右されるものではなく、自白とはいえない。したがって、陳述内容を変更しても自白の取消法の適用は受けない。
結論
消費貸借の成立額に関する陳述は法律上の意見であり自白に当たらない。裁判所は天引きの事実に基づき、制限利息の範囲内で正当な成立額を確定すべきである。
実務上の射程
主要事実と法律上の意見を区別する際のリーディングケース。答案上では、自白の対象が「事実」に限られ「権利自白」が原則として否定されることの根拠(裁判所の法適用権限)として引用する。特に利息天引き等の計算が絡む法律効果の主張については、本判例を基に自白の成立を否定すべきである。
事件番号: 昭和30(オ)65 / 裁判年月日: 昭和32年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所による証拠の取捨選択および事実の認定は、特段の事情がない限り、裁判所の専権に属する自由な判断(自由心証主義)に基づくべきものである。 第1 事案の概要:上告人は、原審における各供述によって「別口保証」の事実が認められるべきであり、これを認めなかった原判決には採証の法則に違反する理由不備の違法…