当事者本人訊問が唯一の証拠方法であつても、適法な呼出を受けた当事者が、何等理由を届出でることなく出頭しなかつた場合には、その取調をしないで審理を終結しても、違法とはいえない。
唯一の証拠を取調べなくても違法とならない一事例
民訴法259条
判旨
金銭借入契約における約款の内容が、一方当事者の義務不履行時にも他方当事者が解除権を行使して債務を免れるなどの相互的な利益調整を伴うものであれば、過当な利益獲得を目的とする不法なものとは言えず、公序良俗(民法90条)に反しない。
問題の所在(論点)
契約証書に定められた約款が、過当な利益獲得を目的とする不法なものとして公序良俗(民法90条)に反し無効となるか。
規範
契約条項が公序良俗に反して無効とされるか否かは、当該条項の内容が一方的な過当な利益獲得を目的とする不当なものであるか、あるいは当事者双方の利益衡平が図られているか等の実質面から判断される。
重要事実
上告人と被上告人との間で金銭借入契約が締結され、その契約証書8条に特定の約款が定められていた。この約款について、上告人は公序良俗に違反し無効であると主張した。なお、原審の証拠調べにおいて上告人は適法な呼出を受けながら、正当な理由なく二度にわたり出頭せず、本人尋問が行われないまま結審していた。
あてはめ
本件約款の内容を検討すると、被上告人が契約上の義務を履行しない場合には、上告人が契約を解除して融資金の弁済を免れることができる旨が定められていた。このような定めは、一方当事者のみが過当な利益を得ることを目的としたものとは認め難く、契約当事者間のバランスを欠いた不公正な内容とは言えない。したがって、本件契約の内容自体が公序良俗に違反すると評価することはできない。
結論
本件約款は公序良俗に違反せず、有効である。したがって、これに依拠した原判決の判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
契約自由の原則の下で、特定の約款が公序良俗違反となるかの判断において、利益の相互性や制裁の均衡を重視する判断枠組みを示している。また、唯一の証拠方法であっても、当事者が正当な理由なく出頭しない場合には、裁判所がそれを取り調べずに結審しても違法ではないという訴訟法上の準則も併せて示されている。
事件番号: 昭和30(オ)738 / 裁判年月日: 昭和33年5月20日 / 結論: 棄却
価統制令に違反した価額で魚粕を買い受けるものであることを知りながら、その買主に買受資金を貸与した場合であつても、原審認定の事情(原判決理由参照)の下になされたものであるときは、民法第七〇八条の適用はなく、貸主は貸金の返還を請求することができる
事件番号: 昭和60(オ)356 / 裁判年月日: 昭和61年11月20日 / 結論: 棄却
クラブのホステスが顧客の当該クラブに対する飲食代金債務についてした保証契約は、ホステスにおいて自己独自の客としての当該顧客との関係の維持継続を図ることによりクラブから支給される報酬以外の特別の利益を得ることを目的として任意に締結したと認められるなど原判示のような事情がある場合には、公序良俗に反するものとはいえない。