一 相続の放棄が無効であることの確認を求める訴は、不適法である。 二 相続の放棄が無効であることの確認を求める請求に対し、被告が、口頭弁論において、原告の請求どおりの判決を求める旨陳述しても、請求の認諾の効力を生ずるものではない。
一 相続放棄無効確認の訴の適否 二 相続放棄無効確認の請求に対する請求どおりの判決を求める旨の陳述と請求の認諾
民訴法225条,民訴法203条
判旨
相続放棄が無効であることの確認を求める訴えは、それによっていかなる具体的な権利又は法律関係の存否の確認を求めるかが明確でない限り、適法な確認の訴えの対象を欠く。また、相続税額に関する誤認は相続放棄の動機の錯誤に過ぎず、民法95条(当時)の適用はない。
問題の所在(論点)
1. 「相続放棄が無効であること」の確認を求める訴えは、確認の訴えの対象として適法か。2. 被告による請求認諾の陳述がある場合に、裁判所は直ちに訴訟を終了させるべきか。3. 相続税額が予期に反して高額であったことは、相続放棄の取消・無効事由としての錯誤にあたるか。
規範
1. 確認の訴えの対象は、特段の規定のない限り、特定の具体的な権利又は法律関係の存否であることを要する。2. 意思表示の要素に錯誤があるというためには、意思表示の内容となる事項に錯誤が必要であり、単なる動機の錯誤は意思表示の要素の錯誤にあたらない。
重要事実
上告人(原告)らは、昭和25年に行った被相続人Dの相続放棄が無効であることの確認を求めて提訴した。上告人らの主張によれば、本件相続放棄の結果、被上告人(被告)の相続税が予期に反して多額に上ったことが無効の理由(錯誤)であった。第一審および原審において、被上告人の特別代理人が「原告請求通りの判決を求める」旨を陳述したが、裁判所は請求の認諾による訴訟終了の措置を採らなかった。
事件番号: 昭和33(オ)1042 / 裁判年月日: 昭和37年5月24日 / 結論: その他
共同相続人の一人が単独相続による所有権全部取得の登記をなした場合、他の共同相続人は、共有名義に変更を求める登記更正手続の請求はできるが、右登記全部の抹消を求めることはできない。
あてはめ
1. 本件訴訟において、上告人らは単に「相続放棄が無効である」との確認を求めているが、その結果としてどのような具体的権利(例えば相続権の存在や特定の財産の所有権等)の確認を求めるのかが不明確である。相続は複雑広汎な法律関係を伴うため、確認対象が具体化されない限り、適法な訴えの対象を欠く。2. 確認の訴えが対象を欠き不適法である以上、被告が認諾の陳述をしたとしても、民事訴訟法上の請求の認諾としての効力は生じない。3. 相続放棄によって発生する相続税額の多寡は、相続放棄の申述の内容そのものではなく、放棄を決意するに至った「単なる動機」に過ぎない。したがって、民法95条の適用は認められない。
結論
本件訴えは適法な確認の対象を欠き、また相続税額に関する錯誤は単なる動機の錯誤であるため、請求は認められない(棄却)。
実務上の射程
確認の利益における「対象の適切性」に関する重要判例。過去の法律上の行為(相続放棄)自体の無効確認は、現在の具体的な権利義務関係の存否に結びつかない限り「事実上の関係」の確認に類するものとして却下されるリスクを示す。また、動機の錯誤を理由とする相続放棄の取消しを制限的に捉える実務上の指針となる。
事件番号: 昭和27(オ)1219 / 裁判年月日: 昭和29年12月21日 / 結論: 棄却
相続放棄の申述書には、申述者が自署するのを原則とするが、自署でなければ無効であるということはできない。
事件番号: 昭和30(オ)95 / 裁判年月日: 昭和31年10月4日 / 結論: その他
遺言者の生前の遺言無効確認の訴は不適法である。