宅地が町の目貫の街路に面し、町の中枢地点に位置して商店、役場、警察署、銀行、郵便局等軒をならべる市街地に存在し、裏手も田畑に至るまでには相当の距離にあり、建物も農業用としてよりは遥かに店舗として利用価値高く、附属的農業用施設としては何ら見るべきものもなく、場所的にもこれを設ける余地のないような場合、右宅地建物は自作農創設特別措置法第一五条第二項第三号の「宅地又は建物の位置、環境及び構造等により買収を不適当とする場合」に該当する。
自作農創設特別措置法第一五条第二項第三号にあたる一事例
自作農創設特別措置法15条1項2項
判旨
自作農創設特別措置法15条2項3号に基づき、宅地又は建物の位置、環境、構造等からみて農業用施設としての実態を欠き、他用途の価値が著しく高い場合には、買収を不適当とする場合に該当し、その買収は認められない。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法15条2項3号に基づき、宅地又は建物が「買収を不適当とする場合」に該当するか否かの判断基準が問題となる。
規範
自作農創設特別措置法15条2項3号の「宅地又は建物の位置、環境及び構造等により買収を不適当とする場合」とは、当該物件の場所的状況、周囲の環境、及び現利用の実態等を総合的に考慮し、農業用施設としての必要性や適合性が著しく低い場合を指す。
重要事実
本件宅地建物は、町の主要街道に面した商店街の中枢に位置し、役場や銀行等が立ち並ぶ市街地にあった。建物は農業用よりも店舗としての利用価値が高く、裏庭も農作業(籾乾場)への転用が困難な状況であった。現に、所有者の農機具は僅かな小道具があるのみで、附属的農業用施設と呼べるものは存在せず、場所的にも新設の余地がなかった。
事件番号: 昭和27(オ)131 / 裁判年月日: 昭和28年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法15条1項2号に基づく建物の買収には、明文の規定がなくとも、当該建物が売渡農地の利用上必要であることを要する。 第1 事案の概要:訴外Dは、本件建物に10年以上居住し農業を続けていた。その後、自作農創設特別措置法に基づき、わずか3畝10余歩の農地の売渡しを受けた。これに附帯して…
あてはめ
本件物件は、市街地の中心部という「位置」にあり、商店や公共施設に囲まれた「環境」に照らせば、農業用よりも店舗としての利用に適している。また、農業用施設としての実態がほとんどなく、構造的にも農作業への利用が困難である。これらの事情は、同号にいう「位置、環境及び構造等により買収を不適当とする場合」に該当すると評価される。
結論
本件宅地建物の買収を相当と認めることはできず、買収処分を否定した原判決の判断は正当である。
実務上の射程
行政処分における「不適当」等の概括的な要件の解釈において、物件の物理的属性だけでなく、周辺環境や経済的利用価値といった多角的な事実関係を規範に当てはめる際の考慮要素を示す例として活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)118 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
市町村農業委員会は、買収目的地が自作農創設特別措置法施行令第八条第二号にいう「鉱山又は炭坑附近の農地で陥没の虞あるもの」に該当するかどうかの認定につき専権を有するものではなく、委員会がその認定を誤り買収より除外すべき農地につき買収計画を定めた場合には、右計画は違法である。
事件番号: 昭和26(オ)214 / 裁判年月日: 昭和28年12月18日 / 結論: 破棄差戻
昭和二四年六月法律第二一五号による自作農創設特別措置法の改正前においても、右改正によつて加えられた同法第一五条第二項に該当する事情のある場合は、同条第一項によるいわゆる附帯買収の申請を相当と認めることができない。
事件番号: 昭和25(オ)335 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
農地の売渡を受けた者が賃借している宅地上に家屋を所有して居住していても、その家屋で飲食業と煙草小売業を営み、しかもその宅地が県道に沿い建物は県道に面して建てられ、その位置、構造、間取り等右営業を営むに適するようにできており、表面は県道に接していてすこしの空地もなく裏側には僅かな庭があるだけで農作物の脱穀、乾燥等をするに…
事件番号: 昭和25(オ)221 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: その他
昭和二二年法律第二四一号による自作農創設特別措置法改正後の同法第六条の二第二項各号に該当する場合は、右改正前の同法附則第二項による農地買収計画も違法である。