正当事由にもとずく賃貸借の終了を原因とする建物明渡の請求訴訟において、たとい賃貸人の解約申入当時正当事由がなくても、賃貸人がその後引きつづき明渡を請求するうち事情が変つたため正当事由があることになり、かつそのときから口頭弁論終結当時までに六月を経過したときは、裁判所は右請求を認容すべきである。
解約申入後の事情の変更により正当事由があることになつた場合と建物明渡請求の許否
借家法1条ノ2,借家法3条1項
判旨
借地借家法第28条(旧借家法第1条ノ2)の「正当の事由」は、解約申入れ当時の事情のみならず、口頭弁論終結時までに生じた事情も含めて判断される。
問題の所在(論点)
旧借家法第1条ノ2(現行借地借家法第28条)にいう「正当の事由」の有無を判断するにあたり、解約申入れ後に生じた事由を参酌することができるか。
規範
建物賃貸借の解約申入れに必要な「正当の事由」の存否は、解約申入れの時点のみを基準とするのではなく、その後の事情の変更も考慮し、口頭弁論終結時における諸般の事情を総合して判断すべきである。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、賃借人(上告人)に対し、自ら使用する必要があるとして建物の解約申入れ及び明渡し請求を行った。原審は、解約申入れの時期よりも後に生じた事由を「正当の事由」の判断材料に含めて認容したため、賃借人側が、解約申入れ後の事情を考慮するのは不当であるとして上告した。
あてはめ
被上告人は昭和23年6月の解約申入れ以降も継続して明渡しを請求しており、口頭弁論終結当時において「正当の事由」を基礎付ける諸事実が存在していた。これらの事実が発生してから既に法定の期間(6月)を経過していることが記録上明らかである以上、申入れ後の事情を考慮して解約の効力を認めた原審の判断に合理的な事情を妨げるような不備はない。したがって、口頭弁論終結時において正当事由が具備されている以上、解約申入れによる明渡し請求権は認められる。
結論
解約申入れ後に生じた事由であっても、口頭弁論終結時までに存在し、かつ期間の経過等の要件を満たすのであれば、正当事由の判断に供することができる。
実務上の射程
正当事由の判断基準時が口頭弁論終結時であることを示した重要判例である。答案上は、解約申入れ時点では正当事由が不足していても、訴訟係属中に生じた立退料の提供の申出や、賃貸人の必要性の増大などを考慮する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)220 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解約申入れにおける正当事由の存否は、当事者双方の諸事情を比較考量して判断されるべきである。 第1 事案の概要:本件は、建物の賃貸人が賃借人に対し、借家法(当時)に基づき解約の申入れを行った事案である。原審(控訴審)は、当事者双方の事情を認定・比較した上で、本件解約申入れには正当な事由が…