不動産の所有権移転登記または電話加入名義の変更登録が事実上の権利関係に合致するときは、たとえ右登記登録が譲渡人の死亡後同人またはその代理人名義の申請によりなされたものであつても、譲渡人の相続人は、譲受人に対しその抹消を請求することはできない。
不動産または電話加入権の譲渡人の死亡後同人またはその代理人の名義でなされた登記登録と相続人の抹消請求の許否
民法111条,民法653条,不動産登記法26条,旧電話規則(昭和12年逓信省令73号)7条
判旨
不動産の譲受人が、譲渡人の死亡後に同人名義で所有権移転登記を完了した場合であっても、当該登記が実体上の権利関係に合致するものであるときは、譲渡人の相続人は当該登記の抹消を請求することができない。
問題の所在(論点)
不動産の譲受人が譲渡人の死亡後に譲渡人名義で移転登記を行った場合、相続人は当該登記が実体関係に合致していても、手続の瑕疵を理由に抹消を請求できるか。
規範
登記や登録が実体上の権利関係に合致している場合、その手続上の瑕疵(死亡した者の名義で行われた等)があったとしても、その権利関係を公示する目的は達せられている。また、相続人は被相続人の義務を包括承継し、譲受人に対して実体上の権利関係に合致するよう登記等の手続に協力すべき義務を負う立場にある。したがって、現在の登記が実体関係を正しく反映している限り、その抹消を求めることはできない。
重要事実
被上告人は、Dから本件家屋、給水設備および電話加入権を買い受けた。その後、Dが死亡し、上告人はDを家督相続した。本件家屋の所有権移転登記、ならびに給水設備および電話加入権の名義書替登録は、Dの死亡後にDの名義(またはDの代理人による申請)によって行われた。上告人は、これらの登記等がDの死亡後になされた不適法なものである等と主張して、登記の抹消等を求めて提訴した。
事件番号: 昭和28(オ)111 / 裁判年月日: 昭和31年7月27日 / 結論: 破棄差戻
不動産の譲渡人から与えられた代理権に基き、譲渡人の死亡後同人の代理人名義の申請によつてなされた移転登記は、それが現在の真実な権利状態に符合するものである限り、対抗力を有し、譲渡人の相続人は譲受人に対し、その抹消を請求することはできない。
あてはめ
本件において、被上告人はDとの売買契約により本件家屋等の権利を正当に取得しており、現在の登記・登録は実体上の権利関係に合致している。上告人はDの家督相続人として、被上告人に対し、実体関係に合致するよう登記・登録に協力すべき義務を承継している。そうである以上、たとえ登記申請がDの死後になされたものであったとしても、実体関係に反しない登記を抹消させることは、上告人が負うべき義務の内容に照らして許されないというべきである。
結論
本件登記等は実体上の権利関係に合致しており、上告人はその抹消を請求することはできない。
実務上の射程
死者名義の登記申請という手続的瑕疵がある場合でも、実体関係との合致を優先し、無用な抹消・再登記を回避する実務上の指針となる。答案上では、不動産物権変動において「登記と実体関係の不一致」が問題となる場面で、手続的瑕疵の治癒や抹消請求の可否を論じる際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和41(オ)1097 / 裁判年月日: 昭和42年6月6日 / 結論: 棄却
不動産の所有権が順次甲、乙、丙と譲渡された場合に、甲が乙に対し所有権移転登記をする意思で、登記申請書類を交付していたときは、甲の右登記申請意思は、丙が右書類を利用して甲から丙に直接所有権移転登記をすることを無効たらしめるものではない。
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。
事件番号: 昭和40(オ)656 / 裁判年月日: 昭和41年11月10日 / 結論: 棄却
一審判決の送達が不適法であつても、控訴審において異議なく訴訟を遂行してきた以上、適法な上告理由とならない。
事件番号: 平成11(オ)773 / 裁判年月日: 平成12年1月27日 / 結論: その他
甲名義の不動産につき、甲から乙、乙から丙への順次の相続を原因として直接丙に対する所有権移転登記がされているときに、右登記を甲の共同相続人丁及び乙に対する所有権移転登記並びに乙から丙に対する持分全部移転登記に更正することはできない。