国税徴収法による差押物件が差押と同時に所有者に保管を命ぜられその使用が許可されており、将来公売する場合には公売公告の初日からその期日までに少くとも一〇日間の期間を存し、公売実行のためにはそれまでに所定の公売執行場まで差押物件を運搬することを要し、従来から公売に際しては公売通知を滞納者に通知しており、差押の日から公売の日まで通例三五日から四七〇日くらい存し、当該差押物件について未だ公売公告がなされていない場合は、国税徴収法による差押処分の取消を求める訴について、国税徴収法第三一条ノ四第一項にいわゆる「再審査ノ決定若ハ審査ノ決定ヲ終ルコトニ依リ著シキ損害ヲ生ズル虞アルトキ」に該当しない。
国税徴収法第三一条ノ四第一項にいわゆる「再審査ノ決定若ハ審査ノ決定ヲ終ルコトニ依リ著シキ損害ヲ生ずる虞アルトキ」に該当しない場合の一事例
国税徴収法31条ノ4第1項,行政事件訴訟特例法2条
判旨
国税徴収法上の執行停止要件である「著しき損害を生ずる虞」の有無は、差押物件の保管状況や公売に至るまでの時間的猶予を総合して判断すべきである。本件のように差押後も継続使用が許され、公売公告すら未了で時間的余裕がある場合には、当該要件を充足しない。
問題の所在(論点)
国税徴収法に基づく差押処分に対し、執行停止を認めるための「著しき損害を生ずる虞があるとき」という要件を、差押物件の使用が継続されており、かつ公売公告前の段階において認めることができるか。
規範
執行停止の要件である「著しき損害を生ずる虞があるとき、その他正当なる事由があるとき」(旧国税徴収法31条の4第1項但書、現行行訴法25条2項参照)に該当するか否かは、処分の執行により回復困難な損害が具体的に生じる急迫性があるか、及び公売手続の進行状況等の客観的事態に照らし、緊急の停止が必要といえるかによって判断する。
重要事実
上告人は税務署による差押処分を受けたが、差押物件は上告人に保管が命じられ、引き続きその使用が許可されていた。また、公売を実施するには公告から期日まで10日以上の期間が必要であり、通常、差押から公告までは平均300日程度の期間を要する。本件においては、未だ公売の公告すらなされていない状況であった。
あてはめ
本件物件は差押中も上告人が使用を継続できており、直ちに営業や生活に致命的な支障が生じているとはいえない。また、公売公告すらなされていない現状では、物件が第三者に売却されるなどして権利が失われる急迫した危険も存在しない。公売手続には相当の期間を要することを踏まえれば、現時点で「著しき損害」が生じる具体的かつ急迫した恐れがあるとは認められない。
結論
本件は「著しき損害を生ずる虞あるとき」に該当せず、執行停止の申し立ては認められない。
実務上の射程
滞納処分における執行停止のハードルが高いことを示す。特に、差押物件の使用が継続されている場合や、公売公告前の段階では「急迫性」を欠くと判断されやすい。現行行政事件訴訟法25条2項の「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」の解釈においても、手続の進展度合いを重視する本判旨の視点は有用である。
事件番号: 昭和25(ク)12 / 裁判年月日: 昭和27年10月15日 / 結論: その他
一 行政事件訴訟特例法第一〇条第二項本文が、行政処分の執行停止について一定の制限を設けているからといつて、同条項は、憲法によつて裁判所に与えられた行政事件審判権を侵犯する違憲の法律とはいえない。 二 民訴第四一九条の二第二項が憲法に違反するとの主張は、適法な同条の抗告理由でない。