農地につき民法上の買戻権を行使する場合には農地調整法第四条による知事の許可を要する。
民法上の買戻権の行使と農地調整法第四条所定の許可の要否
農地調整法4条,農地調整法施行令3条5号
判旨
農地調整法4条の知事の許可制は、相当な理由がある場合には許可がなされることを当然に予定しているため、既得権を侵害する憲法違反の規定には当たらない。
問題の所在(論点)
農地の買戻しに知事の許可を要すると定める農地調整法4条の規定は、行政の恣意により権利が侵害される可能性があるとして、既得権を害し憲法に違反するか。
規範
法律が行政庁の許可を要件としている場合、その運用において相当な理由があれば許可が与えられることを当然の前提としている限り、当該法律が不当な処分を容認し既得権を害するものとはいえず、違憲の評価は受けない。また、行政処分の不当性は処分の取消し等で争うべきであり、適用の不当性をもって法自体の違憲性を導くことはできない。
重要事実
特別上告人は、農地調整法4条所定の知事の許可が必要とされる農地の買戻しに関し、当該規定が既得権を侵害する憲法違反であると主張した。その根拠は、当局の恣意や不公正な処置によって許可が与えられない可能性があるという点に置かれていた。なお、本件では手続上の誤認により一度上告却下判決がなされたが、期間内に理由書が提出されていたことが判明したため、実体判断がなされた。
事件番号: 昭和29(オ)554 / 裁判年月日: 昭和30年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地調整法施行当時において、農地の潰廃(転用)に制限はなく、許可を要することとなったのは昭和16年の臨時農地等管理令施行以降である。したがって、それ以前に宅地化した土地については、同管理令に基づく許可の有無は問題とならない。 第1 事案の概要:本件土地は昭和13年ないし14年頃に埋立工事が完了し、…
あてはめ
農地調整法4条は、本件のような買戻しの場合にも適用される。同条の許可制は、相当の理由がある場合には許可がなされることを当然に予想しており、実際に本件でも後に許可がなされている。上告人は、当局の恣意により許可が与えられない可能性を指摘するが、それは処分の不当不法を争うべき問題である。行政処分が不当になされる「可能性」を前提として、法そのものが憲法に違反すると断ずるのは論理の飛躍であり、国民の自由を制限する多くの法規を否定することに繋がるため採用できない。
結論
農地調整法4条は、既得権を害する憲法違反の規定ではない。したがって、同条の解釈を非難するに過ぎない本件特別上告は理由がない。
実務上の射程
行政上の許可制全般の合憲性を基礎付ける射程を持つ。処分の不当性と法の違憲性を峻別する判断枠組みは、憲法29条(財産権)や13条(公共の福祉)を巡る論点において、法制度自体の合理性を肯定する際の論理として答案に活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)163 / 裁判年月日: 昭和29年5月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審で追加された請求が、元の請求と請求原因を全く異にし、かつ元の請求の当否を判断する先決関係にもない場合、それは訴の変更に該当する。その変更が訴訟手続を遅延させると認められるときは、裁判所はこれを許容しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は第一審において、対象土地の所有権確認および移転登…
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和26(オ)650 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法14条違反を主張していても、その実質が原審の証拠判断や事実認定を非難するにすぎない場合は、正当な違憲の主張には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の証拠判断および事実認定を不服とし、これが憲法14条(法の下の平等)に違反する旨を主張して上告を申し立てた。しかし、その主張の具体的な内容…
事件番号: 昭和26(オ)414 / 裁判年月日: 昭和33年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分による物権変動については、民法177条の適用はなく、登記がなくても第三者に対抗できる。また、同法に基づく買収により所有権を失った旧所有者であっても、買収処分の無効等を争う訴えの利益は否定されない。 第1 事案の概要:本件は、自作農創設特別措置法に基づき行われ…