不法原因給付の返還のための代物弁済は、有効である。
不法原因給付の返還のための代物弁済の効力
民法708条,民法482条
判旨
民法708条は不法原因給付者の返還請求権を否定するにすぎず、受領者が任意に返還することや、当事者間で返還の合意をすることは禁止されない。したがって、不法原因給付である前渡金の返還に代えて不動産を譲渡する代物弁済契約も、公序良俗に反せず有効である。
問題の所在(論点)
不法原因給付の返還を目的として当事者間で締結された返還契約、およびその履行としてなされた代物弁済(不動産譲渡)は、民法708条または90条に抵触し無効となるか。
規範
民法708条の趣旨は、不法な給付をした者の返還請求に法律上の保護を与えないという点にあり、受領者が給付を保持する法的権利を確定させるものではない。したがって、①受領者が任意に給付を返還すること、および②当事者間において給付を返還する旨の契約を締結することは、同条および90条に反せず有効である。
重要事実
売主Dは、買主Bらとの間で地下足袋の売買契約を締結し、代金の前渡金として合計73万1750円を受領した。この売買契約は統制法規に違反し無効であり、前渡金の給付は不法原因給付(民法708条)に該当し得るものであった。その後、DとBらは、当該前渡金の返還に代えてD所有の不動産等の所有権をBらに移転する合意(代物弁済契約)をし、所有権移転登記を完了した。後にDの相続人である上告人が、右返還合意および不動産移転の無効を主張した。
事件番号: 昭和40(オ)740 / 裁判年月日: 昭和41年7月28日 / 結論: 棄却
一 会社が債権者からの差押をうけるおそれがあつたので、第三者が当該会社の財産管理処分の任にあたつていた取締役と図り、会社所有の不動産につき売買を仮装して、自己の名義に所有権移転登記手続を経由した場合において、やがて会社に対し右不動産の所有名義を返還すべきことを知悉していたなど、判示事実関係のもとでは、第三者は民法第七〇…
あてはめ
仮に前渡金の給付が不法原因給付に該当し、BらからDへの返還請求が法的に保護されない状態にあったとしても、Dが任意にこれを返還することは妨げられない。本件では、DとBらの間で前渡金の返還に代えて不動産を譲渡する旨の合意がなされており、これは受領者側から任意に返還を約束するものである。このような返還契約は民法708条が禁ずる「法律上の保護を与えない請求」には当たらず、公序良俗に反するともいえない。よって、この返還契約に基づきなされた不動産所有権の移転は有効であると解される。
結論
不法原因給付の返還に代えて不動産を譲渡する契約は有効であり、当該契約に基づく所有権移転は認められる。本件上告は棄却される。
実務上の射程
不法原因給付がなされた後であっても、当事者が任意に「原状回復」を図る合意(返還合意や代物弁済)は尊重されるという射程を持つ。答案上では、708条の反射的効果として受領者に所有権が帰属するという議論と整理しつつ、任意返還契約の有効性を肯定する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和33(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
甲が乙から宅地を買受けその旨の所有権取得登記を経由したのち、乙の債務不履行を原因として右売買契約が解除された場合には、甲は乙に対し右登記の抹消登記手続を求めることができる。
事件番号: 昭和36(オ)258 / 裁判年月日: 昭和39年12月22日 / 結論: 破棄差戻
貸金債権を担保する不動産の売買予約完結権につき右債務を弁済したときは予約完結権のための所有権移転請求権保全の仮登記を抹消する旨の調停が成立した場合において、調停条項に右予約完結権の行使の効果について明記されておらずその他判示事情のもとでは、右調停により、前記予約完結権の行使の効果が当初の代物弁済的性質から、いわゆる清算…
事件番号: 昭和40(オ)1498 / 裁判年月日: 昭和41年5月27日 / 結論: 棄却
債務者が、被担保債権額以下の実価を有する抵当不動産を相当な価格で売却し、その代金を当該債務の弁済に充てて抵当権の消滅をはかる場合には、右不動産売却行為は、民法第四二四条所定の債権者を害する行為にはあたらない。
事件番号: 昭和36(オ)953 / 裁判年月日: 昭和38年8月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当な反対給付を条件とする履行の提供は「債務の本旨に従った」ものとはいえず、その後の供託も供託原因を欠き無効である。また、供託金取戻請求権が転付され執行債権者がこれを取り戻したときは、民法496条1項の類推適用により供託は遡及的に効力を失う。 第1 事案の概要:共有物分割調停により、上告人A(買主…