時価を参酌しないで宅地の買収対価を定めた違法があつても、その違法は、自作農創設特別措置法第一四条の訴により主張すべきであつて買収処分取消の理由とはならない。
時価を参酌しない宅地買収対価の決定と買収処分取消の訴
自作農創設特別措置法15条3項,自作農創設特別措置法15条4項,自作農創設特別措置法14条
判旨
農地買収処分における買収価格が時価を参酌せず不当に低額であるとしても、それは価格に関する訴えによって救済されるべき事項であり、買収処分自体の取消事由とはならない。
問題の所在(論点)
農地買収処分において、買収価格の算定が不当であることを理由に、買収処分そのものの取消しを求めることができるか。対価の瑕疵が処分の取消事由となるかが争点となった。
規範
行政処分の効力とそれに基づく対価の適否は区別して構成されるべきである。処分の根拠法において、対価の不服について別途訴訟等による救済手段が用意されている場合、対価の算定過程に瑕疵があったとしても、そのことのみをもって処分自体の効力を否定し、取消しや変更を認める必要はない。
重要事実
上告人は、自らが受けた農地買収処分について、その買収価格の決定に際して時価が参酌されず不当に低額であることを理由に、買収処分自体の取消しを求めて出訴した。しかし、上告人は対価の不服を争うべき適法な出訴期間内に対価に関する訴え(自作農創設特別措置法14条に基づく訴え)を提起していなかった。
事件番号: 昭和34(オ)1181 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、買収対象地の選択は行政庁の裁量に属し、地主に選択権はない。また、宅地化の予見可能性がない農地は同法5条5号の除外事由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人の所有する本件農地に対し、国が自作農創設特別措置法に基づき買収処分を行った。これに対し上告人は…
あてはめ
本件において、上告人が主張する買収価格の不当性は、法律14条が規定する訴えによって争うことが可能であり、十分な救済手段が確保されている。たとえ時価が参酌されなかったとしても、それは価格の問題に留まる。上告人が出訴時期を逸したために救済を受けられないとしても、それは出訴方法の選択を誤った結果に過ぎず、処分自体の違法性を基礎付ける理由とはならない。
結論
本件買収価格の不当性は買収処分の取消事由には当たらないため、上告人の請求は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
処分の対価(補償額)の不服と処分自体の適否を切り分ける実務上の確立した法理(形式的当事者訴訟と抗告訴訟の準別)の先駆け。対価に不服がある場合は、対価の増額請求訴訟を提起すべきであり、処分自体の取消しを求めても認められないことを示す。
事件番号: 昭和37(オ)555 / 裁判年月日: 昭和38年1月25日 / 結論: 棄却
訴願書がその方式において欠くるところがあるとして補正すべき期限を指定し還付されたのに、訴願人がその欠缺の補正に応じなかつた場合においては、関係行政庁は訴願の提起がなかつたものとして取り扱うことができると解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)1078 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
宅地買収計画取消請求の訴において、買収対価の不当がその違法事由の一として主張されている場合には、予備的請求としての買収対価増額請求の訴は、出訴期間経過後に提起されたものであつても、出訴期間遵守の点においては欠くるところがないと解すべきである。
事件番号: 昭和25(オ)160 / 裁判年月日: 昭和27年3月6日 / 結論: 棄却
市町村農地委員会の定めた農地の買収計画、売渡計画に対する都道府県農地委員会の承認は、民訴応急措置法第八条、自作農創設特別措置法第四七条の二、同法附則第七条、行政事件訴訟特例法等にいう行政庁の処分ということはできない。
事件番号: 昭和25(オ)73 / 裁判年月日: 昭和25年10月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴願期間の経過に関し、旧訴願法8条3項にいう「宥恕スベキ事由」の有無の判断は、行政庁の自由裁量に属するものではなく、裁判所が審理判断し得る事項である。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収計画に対して異議および訴願を経た後に出訴したが、原審はその訴願が期間経過後になされた不適法なものであると判断し…