借地法にいわゆる建物とは、一般通念に従つてその意義を定むべきで、家屋台帳等公の帳簿に記載され課税の対象となつているものだけに限るものと解すべきではない。
借地法にいわゆる建物の意義
借地法1条
判旨
借地法(現:借地借家法)にいう「建物」とは、家屋台帳への登録や課税の有無といった行政上の形式にかかわらず、一般通念に従って判断されるべきである。
問題の所在(論点)
借地法(現:借地借家法2条1号等)の適用対象となる「建物」の定義について、家屋台帳への登録や課税対象であること等の行政法上の要件が必要か。
規範
借地法上の「建物」の意義については、正規の手続を経て建築され、家屋台帳等の公の帳簿に登録・課税されているといった行政上の要件を満たす必要はない。その定義は、社会一般における建物の概念、すなわち一般通念に従って判断されるべきである。
重要事実
土地の賃貸人である上告人が、賃貸借期間の満了を理由に土地の明け渡しを求めた事案。上告人は、本件土地上の工作物が正規の手続を経て建築されておらず、家屋台帳等に登録もされていないことから、借地法にいう「建物」には該当せず、同法の適用はない(一時使用目的の賃貸借である)と主張した。
事件番号: 昭和33(オ)273 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
一 仮建築の建物を建てて使用するため、期間を一年とし、当事者協議の上更新し得る約で土地を賃貸したところ、賃借人が、無断で本建築をしたので、賃貸人から家屋収去土地返還の調停を申立てた結果、賃貸期間を調停成立以後約八年とし期間満了のとき賃借人所有の地上建物は賃貸人に贈与する旨の調停が成立した場合、右賃貸借は、一時使用のため…
あてはめ
借地法は建物所有を目的とする土地利用者の保護を目的とする法律である。本件の工作物が行政上の登録を欠いているとしても、それは課税等の行政管理上の問題にすぎない。建物としての実体を備え、一般通念上「建物」と認められるものであれば、借地法の保護対象となる「建物」に該当するといえる。本件賃貸借は、一時使用目的(旧法9条)ではなく、通常の建物所有を目的とする賃貸借に変更されたものと解される。
結論
借地法上の建物は一般通念に従い判断されるため、公簿登録の有無に関わらず、建物所有を目的とする本件賃貸借には借地法が適用される。
実務上の射程
借地借家法2条1号の「建物」の定義に関する基礎的判例である。未登記建物や違反建築物であっても、屋根・周壁・土地への定着性といった建物の実体(一般通念)を備えていれば、同法の適用を肯定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)93 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
罹災建物の敷地の所有者が、自己の所有権に基き現に建物所有の目的でその敷地を使用しているときは、たといその敷地につき借地権者がある場合でも罹災都市借地借家臨時処理法第三条の準用する同法第二条第一項但書にいわゆる「その土地を、権限により現に建物所有の目的で使用する者があるとき」に該当すると解するのが相当である。
事件番号: 昭和37(オ)995 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
一 一時使用のための土地賃借人が七〇才をこえる老人であるからといつて、これに対し右賃貸借を解除して建物収去土地明渡を求めることは、原審確定の事実関係のもとで権利濫用とはいえない。 二 借地契約にあたつて賃借人が第三者の無断建築物を買い取り右居住者を立ち退かせる約定があり、賃借人において、これを買い取つたといういきさつが…
事件番号: 昭和28(オ)326 / 裁判年月日: 昭和29年4月2日 / 結論: 棄却
正当に敷地を賃借して、現に建物を所有するか、若しくは、建物所有の目的で建築中の者があるときは、借地権及び建物につき登記がなくても、罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項但書の「その土地を、権原により現に建物所有の目的で使用する者があるとき」にあたる。
事件番号: 昭和42(オ)293 / 裁判年月日: 昭和42年12月5日 / 結論: 破棄差戻
ゴルフ練習場として使用する目的でされた土地の賃貸借がされた場合には、たとえ当初からその土地上にゴルフ練習場の経営に必要な事務所用等の建物を築造、所有することが予想されていたとしても、特段の事情のないかぎり、その土地の賃貸借は、借地法第一条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」賃貸借ということはできない。