一 子でない者が戸籍上嫡出子として記載されている場合に、その記載が親の虚偽の嫡出子出生届に基くものであるからといつて、その親の親子関係不存在の主張が禁止されることはない。 二 養子とする意図で他人の子を嫡出子として届けても、それによつて養子縁組が成立することはない。 三 父母一方の死亡後は、生存者単独で嫡出親子関係不存在確認の訴訟を提起することができる。 四 嫡出親子関係不存在確認の請求には、子の承諾(又は同意)を要しない。
一 虚偽の嫡出子出生届をした者の嫡出親子関係不存在の主張の適否 二 虚偽の嫡出子出生届と養子縁組の成否 三 父母一方の死亡と嫡出親子関係不存在確認訴訟の適否 四 嫡出親子関係不存在確認の請求と子の承諾の要否
民訴法225条,旧民法第4編第4章1節1款嫡出子,旧民法820条,旧民法837条,旧民法843条,旧民法847条,旧民法775条,旧民法第4編第4章第1節1款嫡出子,旧戸籍法(大正3年法律26号)88条
判旨
他人の子を嫡出子として届け出た場合でも、親子関係不存在確認の訴えを提起する利益は認められ、また当該届出に養子縁組としての効力は認められない。さらに、戸籍上の父母の一方が死亡した後であっても、生存する他の一方は単独で親子関係不存在確認の訴えを提起できる。
問題の所在(論点)
①虚偽の嫡出子届出をした者からの親子関係不存在確認の訴えの利益の成否、②嫡出子届出を養子縁組の届出とみなせるか、③戸籍上の父の死亡後に母が単独で親子関係不存在確認の訴えを提起できるか。
規範
1. 嫡出子関係は、妻が婚姻中に懐胎した子であることを要件とする。真実の親子関係がないにもかかわらず嫡出子として届け出がなされた場合、外形上の親子関係を合真実に確定するため、当事者双方は親子関係不存在確認の訴えの利益を有する。2. 養子縁組は戸籍法所定の届出を要する要式行為であり、かつ強行法規であるため、嫡出子出生届をもって養子縁組の届出とみなすことはできない。3. 嫡出子関係不存在確認の訴えは人事訴訟法の規定を類推適用すべきであり、戸籍上の父母の一方が死亡した後は、生存する一方が単独で訴えを提起できる。
事件番号: 昭和28(オ)1397 / 裁判年月日: 昭和34年5月12日 / 結論: 棄却
戸籍上親子と記載されている者の双方が死亡した後に、その親子関係不存在の確認を求める訴は許されない。
重要事実
亡Dと被上告人(妻)の夫婦は、他人の子である上告人を自分たちの嫡出子として戸籍上の届出を行い、実子として養育してきた。上告人も被上告人夫婦を実父母と信じていた。その後、Dが死亡。被上告人は、上告人との間に親子関係が存在しないことの確認を求めて提訴した。これに対し上告人は、届出に関与した被上告人側からの提訴は許されないこと、当該届出は養子縁組の届出として有効であること、およびDの死後に被上告人が単独で提訴することは訴訟適格を欠くことを主張して争った。
あてはめ
①上告人はE・F間の婚姻外の子であり、被上告人夫婦の嫡出子ではない。戸籍上の記載により外形上親子関係が存在するとされる以上、従前の養育実態にかかわらず、合真実な関係を確定する法的利益がある。②養子縁組は厳格な要式行為であり、要件を欠く嫡出子出生届を養子縁組届と解することは法的に許されない。③人事訴訟法は身分関係の合真実確定のため、当事者の死亡時における訴訟遂行に配慮しており(人訴法類推適用)、生存する一方と子との間に確認の利益がある限り、単独での提訴が認められる。届出が一方的意思であったことや被承継人の生前の期待は、この結論を左右しない。
結論
被上告人の提訴は適法であり、上告人との間に親子関係が存在しないことを確認した原審の判断は正当である。
実務上の射程
虚偽の嫡出子届出(「わらじ脱ぎ」等の慣行)がなされた事案における、親子関係不存在確認の訴えの可否および養子縁組転換の否定に関するリーディングケース。人事訴訟法上の訴訟承継や被告適格の議論において、死亡後の提訴の可否を論じる際の論拠となる。
事件番号: 平成7(オ)1095 / 裁判年月日: 平成10年8月31日 / 結論: 棄却
夫婦が子の出生する九箇月余り前に別居し、夫婦間にはその以前から性交渉がなかったが、夫は、別居開始から子の出生までの間に、妻と性交渉の機会を有したほか、妻となお婚姻関係にあることに基づいて婚姻費用の分担金や出産費用の支払に応ずる調停を成立させたなど判示の事実関係の下においては、嫡出否認の訴えによらずに夫が提起した親子関係…