旧民法第八六六条第五号の家名汚涜を離縁原因とする規定は、民法応急措置法第三条にいわゆる家に関する規定にあたるものと認められ、同条により右規定は昭和二二年五月三日以降は適用されないものである。
旧民法第八六六条第五号と民法応急措置法第三条
旧民法866条5号,民法応急措置法3条,新民法附則13条,新民法附則11条
判旨
旧民法における「家名汚涜」を理由とする離縁規定は、民法応急措置法3条の「家に関する規定」に該当し、昭和22年5月3日以降は適用されない。
問題の所在(論点)
旧民法866条5号に規定される「家名汚涜」による離縁原因は、日本国憲法施行に伴う民法の応急的措置に関する法律(民法応急措置法)の下で、昭和22年5月3日以降も存続し適用されるか。
規範
民法応急措置法3条にいう「家に関する規定」には、旧民法866条5号の「家名汚涜」を理由とする離縁規定が含まれる。したがって、同条により右規定は昭和22年5月3日以降は適用されず、新民法施行後に口頭弁論が終結した事件においても、新民法附則の規定にかかわらず同号を離縁原因として援用することはできない。
重要事実
養親である上告人が、養子である被上告人らに対し離縁を請求した。上告人は、被上告人らが上告人を悪意で遺棄したこと(旧民法866条2号)、および被上告人Bが上告人家の家名を汚す重大な過失を犯したこと(同条5号)を離縁原因として主張した。原審の口頭弁論終結時は昭和23年11月10日であり、新民法施行後であった。
あてはめ
旧民法866条5号の規定は、封建的な「家」の概念を維持し、その名誉を守ることを目的とするものであるから、民法応急措置法3条が失効させた「家に関する規定」にあたる。本件では、新民法附則13条・11条の経過措置により従前の例によるべき場合であっても、民法応急措置法が優先して適用される。したがって、家名を汚す行為があったか否かの事実認定にかかわらず、同号を適用して離縁を認めることは法的に許されない。
結論
上告人の請求のうち、家名汚涜を理由とする離縁請求は、適用のない法令を根拠とするものであり認められない。
実務上の射程
法治主義および憲法適合的な法解釈の観点から、旧法時代の身分秩序を維持する規定が憲法及び応急措置法により失効したことを示した判例である。現代の司法試験においては、法改正時における経過規定の解釈や、憲法価値に基づく旧規定の効力否定という論理構成の参考となる。
事件番号: 昭和23(オ)116 / 裁判年月日: 昭和27年12月18日 / 結論: 棄却
一 原判決(後記)の確定した事実関係のもとにおいては、上告人(養子)の行為は、旧民法第八六六条第一号の「虐待」にあたるものと解するのが相当である。 二 離縁の訴において、当事者が訴提起後に生じた事実を請求原因に追加し、裁判所が右追加された事実に基き離縁の判決をすることは、旧民法第八六六条の禁ずるところではない。