一 罹災都市借地借家臨時処理法第三条が準用する同法第二条第一項但書にいわゆる権原により現に建物所有の目的で土地を使用する者とは、法律上何等かの権原に基いてその土地を現に使用している者を意味し、その土地につき借地権譲渡の申出権を有する罹災建物の借主があるか否か又何人であるかに関し、その権原者が善意であると否とを問わない。 二 賃貸人の承諾を得ない転貸借に基いて土地を使用する者は、罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項但書にいわゆる権原により現に建物所有の目的で土地を使用する者にあたらない。
一 罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項但書にいわゆる権原による土地使用者の意義 二 土地の無断転借人と罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項但書にいわゆる権原による土地使用者
罹災都市借地借家臨時処理法2条1項
判旨
罹災都市借地借家臨時処理法2条1項但書(3条準用)の「権原により現に建物所有の目的でその土地を使用する者」とは、賃貸人との関係において適法な使用権原を有する者を指す。無断転借人は、転貸人との債権的な関係を超えて賃貸人に対抗し得る適法な権利を有しないため、同条の「権原による使用者」には該当しない。
問題の所在(論点)
無断転借人が、罹災都市借地借家臨時処理法2条1項但書(3条準用)に規定される「権原により現に建物所有の目的でその土地を使用する者」に該当するか。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法2条1項但書(同法3条にて準用)にいう「権原によりその土地を現に使用する者」とは、法律上何らかの適法な権原に基づいて現に土地を使用している者を指す。この判断にあたっては、当該権原者が善意であるか悪意であるかは問わない。また、第三者との関係で土地の使用を主張できる適法な対抗関係が存在することが必要である。
重要事実
上告人は、東京都(賃貸人)から本件土地を借り受けていた訴外D(賃借人)との間で転貸借契約を締結し、本件土地を使用していた。しかし、この転貸借について賃貸人である東京都の承諾は得られていなかった。上告人は、自身が同法2条1項但書の「権原により現に建物所有の目的で土地を使用する者」に該当すると主張し、借地権譲渡の申出権等の効力を争った。
事件番号: 昭和28(オ)326 / 裁判年月日: 昭和29年4月2日 / 結論: 棄却
正当に敷地を賃借して、現に建物を所有するか、若しくは、建物所有の目的で建築中の者があるときは、借地権及び建物につき登記がなくても、罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項但書の「その土地を、権原により現に建物所有の目的で使用する者があるとき」にあたる。
あてはめ
本件における転貸借は、賃貸人たる東京都の承諾を得ずになされた無断転貸借である。このような転貸借は、上告人と転貸人Dとの間の債権関係としては存在するものの、賃貸人である東京都との関係においては適法に成立したものではない。したがって、上告人は東京都およびその承継人(被上告人)との関係において、本件土地につき使用収益を主張し得る法的地位にあるとはいえず、同条にいう適法な「権原」を有する者には当たらない。
結論
無断転借人は、同法2条1項但書の「権原により土地を使用する者」には該当しないため、同条に基づく保護を受けることはできない。
実務上の射程
本判決は、罹災法における「権原」の解釈について、単なる占有の事実や特定の当事者間での債権的権利では足りず、賃貸人(所有者)との関係で適法性を備えている必要があることを示した。民法612条の無断転貸借の構成と同様、対抗力の有無を重視する実務上の解釈指針となる。
事件番号: 昭和25(オ)93 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
罹災建物の敷地の所有者が、自己の所有権に基き現に建物所有の目的でその敷地を使用しているときは、たといその敷地につき借地権者がある場合でも罹災都市借地借家臨時処理法第三条の準用する同法第二条第一項但書にいわゆる「その土地を、権限により現に建物所有の目的で使用する者があるとき」に該当すると解するのが相当である。
事件番号: 昭和46(オ)202 / 裁判年月日: 昭和46年6月24日 / 結論: 棄却
一、罹災都市借地借家臨時処理法二条による賃借の申出は、相手方である土地所有者において、同条による賃借の申出であることが認識できる程度に明確な意思表示であることを要するものと解すべきである。二、罹災建物の借主が、罹災都市借地借家臨時処理法施行当時罹災建物の敷地上のバラツク建の建物を所有してこれに居住し、右土地につき戦時罹…
事件番号: 昭和34(オ)386 / 裁判年月日: 昭和36年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借地の一部の無断転貸であっても、背信的行為と認めるに足りない特段の事情がない限り、賃貸借契約全部を解除し得る。また、建物買取請求権は転貸人には認められない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)から借り受けていた賃借地の一部を、被上告人の承諾を得ることなく第三者に無断で転貸し…