一、罹災都市借地借家臨時処理法二条による賃借の申出は、相手方である土地所有者において、同条による賃借の申出であることが認識できる程度に明確な意思表示であることを要するものと解すべきである。二、罹災建物の借主が、罹災都市借地借家臨時処理法施行当時罹災建物の敷地上のバラツク建の建物を所有してこれに居住し、右土地につき戦時罹災土地物件令四条二項所定の賃借権を有しているにすぎないときは、同法施行前において土地所有者が右土地の状況を知悉していたとしても、それだけでは右借主が同法二条による賃借の申出をしたものということはできない。
一、罹災都市借地借家臨時処理法二条による賃借の申出の方法 二、罹災都市借地借家臨時処理法二条による賃借の申出があつたとはいえないとされた事例
罹災都市借地借家臨時処理法2条,戦時罹災土地物件令4条
判旨
罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく賃借の申出は、相手方が同条による申出であることを認識できる程度に明確な意思表示であることを要する。
問題の所在(論点)
罹災都市借地借家臨時処理法2条による賃借の申出が有効に成立するためには、どの程度の明示性が必要か。また、土地の利用状況を知悉していることや、相手方の所在不明という事情は、申出の明確性の要件に影響を与えるか。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法2条の賃借の申出があった場合、土地所有者が3週間以内に拒絶しないときは承諾とみなされる。この承諾擬制という重大な法的効果に鑑み、相手方において速やかな諾否の判断を可能にする必要がある。したがって、当該賃借の申出は、相手方において同法2条に基づく申出であることを認識できる程度に明確な意思表示であることを要する。
重要事実
上告人は、罹災都市借地借家臨時処理法施行当時、本件土地上にバラック建の建物を所有して居住し、戦時罹災土地物件令に基づく賃借権を有していた。被上告会社の担当係員は、処理法施行前において当該土地の利用状況を知悉していたが、上告人は同法2条に基づく明示的な申出を行っていなかった。また、上告人は被上告会社の所在を知り得なかったと主張したが、公示による申出の手続きは可能であった。
事件番号: 昭和24(オ)360 / 裁判年月日: 昭和26年4月12日 / 結論: 棄却
一 罹災都市借地借家臨時処理法第三条が準用する同法第二条第一項但書にいわゆる権原により現に建物所有の目的で土地を使用する者とは、法律上何等かの権原に基いてその土地を現に使用している者を意味し、その土地につき借地権譲渡の申出権を有する罹災建物の借主があるか否か又何人であるかに関し、その権原者が善意であると否とを問わない。…
あてはめ
上告人は土地上にバラックを建て居住していたが、これは単なる事実上の占有状況にすぎない。相手方が土地の状況を知悉していたとしても、それだけでは同法2条に基づく法的効果を伴う「賃借の申出」があったと認識させるには足りない。また、相手方の所在が不明であっても公示の方法による申出が可能である以上、手続の懈怠を正当化する理由にはならない。したがって、本件では同条の申出があったとは認められない。
結論
本件における上告人の行為は、同法2条の賃借の申出として認めることはできず、上告を棄却する。
実務上の射程
承諾擬制や期間制限が設けられている特別法上の意思表示において、相手方の予見可能性を確保するための「明示性」の程度を判示した。みなし規定が適用される場面での意思表示の解釈指針として、一般の民事事件においても準用し得る判断枠組みである。
事件番号: 昭和28(オ)326 / 裁判年月日: 昭和29年4月2日 / 結論: 棄却
正当に敷地を賃借して、現に建物を所有するか、若しくは、建物所有の目的で建築中の者があるときは、借地権及び建物につき登記がなくても、罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項但書の「その土地を、権原により現に建物所有の目的で使用する者があるとき」にあたる。
事件番号: 昭和42(オ)912 / 裁判年月日: 昭和46年7月20日 / 結論: 棄却
建物買取請求権およびその代金との引換給付を求める者の抗弁を第一審の最終口頭弁論期日および原審の第一回口頭弁論期日にいたつてはじめて提出した場合においても、当時賃貸人たる原告と訴外甲との間に別訴で係争土地の所有権の帰属が争われており、右抗弁を提出した被告らが甲から本件土地を賃借した旨主張して争つていた事情があるときは、被…
事件番号: 昭和32(オ)46 / 裁判年月日: 昭和33年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法施行前にされた土地賃借の申出は、同法2条所定の優先賃借の申出とは認められず、同法29条による存続期間経過後に優先賃借権を主張するには、法施行後に改めて申出を行う必要がある。 第1 事案の概要:上告人は、建物が滅失した土地について昭和21年3月頃に賃借の申出をしたが、これは…