係争家屋の所有権を取得したと抗争する被告が、その取得の原因として「被告は原告の亡先代から右家屋の贈与を受けた」旨主張している場合弁論の全趣旨から右贈与の主張が死因贈与の主張を包含すると認められる以上、たとい死因贈与を受けた旨の明示的主張がなくても、裁判所が被告は原告先代から右家屋の死因贈与を受けその所有権を取得したと認定しても、当事者の主張しない事実を認定したものとはいえない。
贈与の主張に対し死因贈与を認定したことの適否
民訴法186条,民法554条
判旨
死因贈与契約において、贈与者の死亡により所有権が帰属したと認められる場合、登記の有無や書面の有無に関する判断を欠いたとしても、直ちに理由不備の違法とはならない。
問題の所在(論点)
1. 当事者が単純贈与を主張している場合に、裁判所が死因贈与を認定することは弁論主義に反するか。2. 死因贈与による所有権取得を認めるにあたり、登記の有無や書面の有無(民法550条)についての判断は不可欠か。
規範
贈与者の死亡によって効力を生ずる死因贈与契約においては、死亡という停止条件の成就により受贈者に目的物の所有権が帰属する。また、訴訟手続上、当事者が単純贈与を主張していたとしても、その基礎を同じくする死因贈与を包含する広義の贈与の主張として解釈することが許容される。
重要事実
上告人の先代Dと被上告人は、昭和6年頃、両者が同居していた本件家屋について、Dの死亡時に被上告人に贈与する旨の契約(死因贈与契約)を締結した。その後、昭和19年5月にDが死亡したため、被上告人は本件家屋の所有権を取得したと主張し、占有の正当権限を争った。上告人は、被上告人が単純贈与を主張していたのに裁判所が死因贈与を認定した点や、対抗要件(登記)および書面の有無の検討を欠いた点を違法として上告した。
あてはめ
1. 被上告人の抗弁は、その基礎を同じくし態様を異にするに過ぎない「広義の贈与」に基づく占有権原の主張と解されるため、死因贈与を認定しても、主張しない架空の事実を認めたことにはならない。2. 登記は所有権取得を第三者に対抗するための要件(対抗要件)に過ぎず、権利発生そのものの判断には影響しない。また、原審が適法に事実認定した死因贈与契約が効力を生じた以上、書面の有無等に触れなくとも判決に不備はない。
結論
被上告人は死因贈与契約の効力発生(Dの死亡)により本件家屋の所有権を取得しており、原判決に理由不備の違法はない。
実務上の射程
死因贈与を民法554条に基づき遺贈の規定を準用する枠組みだけでなく、実務上、単純贈与の主張に含まれる予備的・包含的な主張として柔軟に捉える際の根拠となる。また、物権的請求に対する占有権原の抗弁として、所有権取得の事実が認定されれば足り、対抗要件(登記)の欠如が直ちに抗弁を排斥しないことを示す。
事件番号: 昭和26(オ)476 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死因贈与の受贈者と贈与者の相続人からの譲受人との関係は、対抗関係に立つため、登記の先後によって決するべきである。贈与者の相続人は、相続によって目的物上の権利義務を承継するが、その相続人から更に譲り受けた第三者は民法177条の「第三者」に該当する。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Dとの間で、Dの死…