一 かつては畑として耕作された土地が、昭和三年春に耕作が廃止されて原野となり、その後引き続き十数年間耕作されず荒廃していた場合において、昭和一九年春に至り附近居住者十数名が所有者には無断で休閑地利用の菜園として耕作を始めたが、所有者から明渡の請求を受け同年秋耕作物の収獲後明け渡してしまい、右土地が再び休閑地となり、昭和二〇年二月売買されたときは、右土地は、右売買当時においては臨時農地等管理令第二条にいわゆる農地にあたらない。 二 農地委員会において土地を農地買収計画に組み入れても、その土地の所有者が所有権に基いて明渡を求めることを妨げない。
一 臨時農地等管理令第二条にいわゆる農地にあたらない一事例 二 農地買収計画に組み入れられた土地に対する明渡請求の適否
旧臨時農地等管理令(昭和16年勅令114号)2条,自作農創設特別措置法42条
判旨
農地買収計画への組入れは土地所有権の行使を妨げるものではなく、かつ、長期間耕作されず荒廃した土地は客観的に農地に該当しない。
問題の所在(論点)
1. 長期間耕作が放棄され荒廃した土地が、農地として扱われるべきか。2. 農地買収計画に組み入れられた土地について、所有者が所有権に基づく明渡請求を行うことができるか。
規範
1. 土地が農地法(または旧自作農創設特別措置法等)にいう「農地」に該当するか否かは、現況に基づき客観的に判断されるべきである。2. 行政主体による農地買収計画への組入れという事定があったとしても、そのことのみによって所有者が所有権に基づく明渡請求を行う権能は制限されない。
重要事実
本件土地はかつて畑であったが、昭和3年には耕作が廃止され原野となっていた。その後十数年間荒廃が続き、昭和19年に一時的に第三者が無断で菜園として利用したが、所有者からの請求により同年秋には明渡され、再び休閑地(原野)となった。被上告人は昭和20年2月に前所有者から本件土地を買い受けた。その後、昭和23年4月に農地委員会が本件土地を農地買収計画に組み入れたが、被上告人が所有権に基づき明渡を求めた事案である。
あてはめ
1. 本件土地は昭和3年以降、十数年にわたり耕作されず完全に荒廃していた。昭和19年の一時的な無断耕作も短期間で終了し、売買当時(昭和20年)には再び休閑地となっていたことから、現況において「農地」とは認められない。2. 農地委員会による買収計画の策定は行政上の手続きに過ぎず、私法上の所有権に基づく物権的請求権の行使を直接禁止する法的効果はない。
結論
本件土地は農地に該当せず、また農地買収計画の存在は所有権に基づく明渡請求を妨げないため、被上告人の請求は認められる。
実務上の射程
農地性の判断について「現況主義」を採ることを示した点、および行政処分(買収計画)と私法上の権利行使の関係を整理した点に意義がある。行政法規による規制がある場合でも、民事上の権利行使の可否は別個に判断されるべきという実務上の指針となる。
事件番号: 昭和24(オ)177 / 裁判年月日: 昭和25年9月19日 / 結論: 棄却
隠居により相続人の所有に帰した農地が、登記簿上依然隠居者の名義になつていた場合において、その記載を信頼して隠居者に対してなされた農地買収処分は、訴により取り消されないかぎりは有効である。
事件番号: 昭和40(オ)1482 / 裁判年月日: 昭和41年7月26日 / 結論: その他
農地の賃貸借の解除は、訴を以てする場合であつても、都道府県知事の許可を受けないかぎり、その効力を生じない。