最終口頭弁論に関与した裁判官が、判決言渡期日前他へ転補された場合において、判決原本に同裁判官の署名捺印があるときは、右原本は反証がない限り、右裁判官が転補の辞令を受領した日までに作成されたものと認めるのが相当である。
判決原本に言渡前他へ転補された裁判官の署名捺印がある場合と民訴第一九一条第三項
民訴法191条3項,民訴法387条
判旨
判決書の原本は、特段の反証がない限り、最終口頭弁論期日から担当裁判官が転補(異動)するまでの間に作成されたものと推定される。判決言渡期日が変更されたという事実のみでは、原本の作成が当該期日後になされたと認めることはできない。
問題の所在(論点)
裁判官の異動(転補)に伴い、判決原本が適法な時期(職務権限を有する期間内)に作成されたといえるか。特に、言渡期日の変更が原本作成時期の推定を覆す反証となり得るかが問題となる。
規範
判決書の原本作成時期については、特段の反証がない限り、最終の口頭弁論期日から、当該裁判官が転補の辞令を受領するまでの間に作成されたものと解するのが相当である。また、言渡期日の変更という事実は、直ちに原本の作成時期がその変更後であることを基礎付ける事情にはならない。
重要事実
上告人は、原審の担当裁判官(二宮判事)が転補の辞令を受領した後に判決原本が作成されたと主張して、その違法を争った。その根拠として、当初予定されていた昭和24年5月7日の判決言渡期日が変更された事実を挙げ、原本作成が二宮判事の転補後、すなわち同日以降になされたものであると主張した。
あてはめ
本件において、原判決原本は、最終口頭弁論期日である昭和24年4月21日から二宮判事が転補の辞令を受領するまでの間に作成されたと推定される。上告人は言渡期日の変更を指摘するが、原本が既に作成されていても諸般の事情により言渡期日が変更されることはあり得る。したがって、期日の変更があったからといって、直ちに原本作成がその期日後、すなわち転補後になされたと認めるべき事跡とはいえない。
結論
判決原本の作成時期に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
裁判官の異動を理由とする判決無効の主張(民訴法312条2項3号参照)に対する反論として有用である。言渡期日と原本作成時期の独立性を説く際に引用できる。
事件番号: 昭和27(オ)1123 / 裁判年月日: 昭和28年5月29日 / 結論: 棄却
口頭弁論期日変更申立書に、当該期日の十数日前脳溢血症を発し、三ケ月間絶対安静を必要とする旨の診断書が添付されているに止まり、その他の事情(たとえば、訴訟代理人を選任することができないか等)を明らかにする何等の資料もないときは、民訴第一五二条第四項にいわゆる「己ムコトヲ得サル事由」があるものとは認められない。