合資会社が定款その他の内部規約をもつて有限責任社員に業務執行の権利業務ある旨を定めた場合においては、その定は有効である。
合資会社の有限責任社員の業務執行
商法156条
判旨
合資会社の有限責任社員に業務執行権がないとする規定は任意規定であり、定款等の内部規約でこれと異なる定めをすることも有効である。業務執行にあたり不正行為等があった場合には、当該社員の除名請求が認められ得る。
問題の所在(論点)
合資会社の有限責任社員に業務執行権を付与する定款等の定めは有効か。また、当該権限に基づき業務を執行した社員に不正行為があった場合、除名事由となり得るか。
規範
旧商法156条(現行会社法590条1項、591条1項参照)のうち業務執行に関する規定は任意規定である。したがって、合資会社が定款その他の内部規約により、本来業務執行権を持たない有限責任社員に対して業務執行の権利義務を付与する旨を定めた場合、その定めは有効である。
重要事実
合資会社である被上告会社の内部規約には「社員(出資者)は必ず事務または労働に従事すべき」旨の定めがあった。有限責任社員である上告人A1はD支店の主任として、同A2は次席として勤務し、実質的に業務執行に携わっていた。しかし、両名に業務執行上の不正行為および重要義務の不履行があったとして、会社側から社員の除名が請求された。
事件番号: 昭和31(オ)983 / 裁判年月日: 昭和33年5月20日 / 結論: 棄却
合資会社の社員の決議については、予め社員に対し、相当期間を定めて決議事項を通知することは、法律上必要ではない
あてはめ
被上告会社の内部規約(総社員申合規約)において社員の業務従事義務が定められ、実際に上告人らが支店の責任者として勤務していた事実から、上告人らには有効に業務執行権が与えられていたといえる。その上で、上告人らが業務執行にあたり不正行為をなした事実は原審により認定されており、この事実は会社法上の除名事由(業務執行に関する不正行為)に該当すると判断される。他の義務違反の有無を問わず、当該不正行為の存在のみで除名請求は正当化される。
結論
有限責任社員であっても定款等の定めにより業務執行権を有し、その執行に関し不正行為があれば除名請求が認められる。本件上告は棄却される。
実務上の射程
持分会社の内部規律における私法自治の原則を確認した判例である。現行会社法下でも、持分会社の業務執行権者の定めは定款の任意的記載事項であり、本判旨の論理は維持されている。答案上は、有限責任社員の地位と実質的な職務権限が乖離している事案において、除名や責任追及の前提となる「業務執行権」の有無を判断する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和52(オ)833 / 裁判年月日: 昭和53年4月14日 / 結論: 棄却
有限会社の社員総会において、その社員である特定の者を取締役に選任すべき決議をする場合に、その特定の者は、右決議につき特別の利害関係を有する者にあたらない。
事件番号: 昭和39(オ)554 / 裁判年月日: 昭和42年2月10日 / 結論: 棄却
合資会社の社員が、他の社員を相手方として、同社員が同会社の無限責任社員ではないことならびに同会社から利益分配を受ける権利、退社のとき持分払戻を受ける権利および解散のとき残余財産の分配を受ける権利を有しないことの確認を求める訴は、即時確定の利益を欠き、不適法である。