罹災都市借地借家臨時処理法に第一四条の規定があるからといつて、「賃借期間中に賃借人の責任に非る原因に依り家屋が火災其の他災厄に罹りたるときは賃貸又は更に新築して賃借人に之を賃貸すべきことなお官公署の命に依り他に移動する場合も亦右趣旨に依ること」という契約条項が必ず防空法による強制除却の場合を包含するものであると解釈しなければならないことはない。
法令の規定と契約の解釈
罹災都市借地借家臨時処理法14条,民訴法185条
判旨
賃貸借契約における「火災其の他の災厄」に罹った際の新築賃貸義務の特約は、防空法に基づく建物の強制除去(強制疎開)の場合を含まないと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
賃貸借契約における「火災其の他の災厄」により建物が滅失した場合に新築賃貸義務を課す特約が、防空法による建物の「強制除去(強制疎開)」の場合にも適用されるか(契約解釈の範囲)。
規範
契約条項の解釈にあたっては、文言の字義のみならず、契約締結当時の当事者の合理的意思、及び契約の目的に照らして判断すべきである。特に「災厄」等の抽象的文言については、不可抗力による滅失と公権力による強制執行とを区別し、特約の適用範囲を画定する必要がある。
重要事実
上告人と被上告人は昭和10年、建物賃貸借契約を締結した。契約証書11項には「賃借期間中に乙(賃借人)の責任に非る原因により家屋が火災その他の災厄に罹りたるときは、甲(賃借人)は更に新築して乙に賃貸すべきこと」との特約があった。その後、防空法に基づく命令により建物が強制的に除去(強制疎開)されたため、賃借人は右特約に基づき、新築建物の賃貸を求めて提訴した。
あてはめ
本件特約の「災厄」とは、火災に準ずるような偶発的な不可抗力による損害を想定していると解される。防空法に基づく建物の強制除去は、公権力の行使に基づく行政処分であり、通常の自然災害や事故とは性質が異なる。罹災都市借地借家臨時処理法が疎開建物と罹災建物を同列に扱っているからといって、私法上の契約解釈において当然に「災厄」に疎開が含まれると解すべき法的根拠はない。したがって、特約締結時に強制疎開のような事態まで想定して新築義務を課したとみるのは不合理である。
結論
本件の強制除去は特約の適用範囲外であり、被上告人(賃貸人)は建物を新築して賃貸する義務を負わない。
実務上の射程
契約上の抽象的な免責・補償条項の解釈において、行政処分による「公用制限・除去」が「災害」等の文言に含まれるかどうかが争点となる際の判断指針となる。当事者の予見可能性や文言の趣旨から、公権力の行使を安易に自然災害と同視しない実務上の解釈手法を示している。
事件番号: 昭和25(オ)253 / 裁判年月日: 昭和28年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事情変更による契約の解除が認められるためには、契約の基礎となった事情が客観的に激変し、当初の契約通りの履行を強制することが衡平の原則に著しく反すると認められる場合であることを要する。 第1 事案の概要:上告人(買主)は終戦直前、軍用粗製アルコールを製造する目的で、被上告人(売主)から不動産を買い受…