地方自治法一五一条の二第三項による職務執行命令訴訟については、民訴法の補助参加に関する規定を準用する余地はなく、このように解しても憲法三二条に違反するものではない。
職務執行命令訴訟における補助参加の許否と憲法三二条
憲法32条,地方自治法151条の2,行政事件訴訟法6条,行政事件訴訟法7条,民訴法64条
判旨
職務執行命令訴訟は行政機構内部の対立を調整する客観的訴訟の性質を有するため、その性質上、民事訴訟法の補助参加に関する規定を準用する余地はない。
問題の所在(論点)
旧地方自治法151条の2第3項に基づく職務執行命令訴訟において、民事訴訟法の補助参加(民訴法42条等)に関する規定を準用できるか。
規範
職務執行命令訴訟は、国が委任した事務に関する行政機構内部の意思決定過程において、行政機関間の法令解釈等の対立を調整するために特に認められた「客観的訴訟」である。同訴訟は、主務大臣と都道府県知事の間で遂行されることが予定されており、本来行政内部の意思決定過程に関与が認められない第三者が介入することは法の予定しないところである。したがって、同訴訟に民事訴訟法の補助参加の規定を準用することは、訴訟の性質上許されない。
重要事実
沖縄県知事に対し、駐留軍用地特措法に基づく署名押印等を求める職務執行命令訴訟(いわゆる沖縄代理署名訴訟)が提起された際、抗告人らが被告である沖縄県知事を補助するために補助参加を申し出た。原審が、職務執行命令訴訟の性質上、補助参加は認められないとして申し立てを却下したため、抗告人らがこれを不服として特別抗告を行った。
事件番号: 昭和31(ク)182 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】行政機関は法人である自治体の内部機関にすぎず、独立した権利の主体ではないため、自治の権能の侵害を理由とする憲法違反の主張をすることはできない。 第1 事案の概要:抗告人(特定の市の機関)は、原決定が自治の本旨に基づいて当該機関が有する権能を侵し、憲法92条の趣旨に反すると主張して、最高裁判所に抗告…
あてはめ
職務執行命令訴訟は、知事の自主独立性の尊重と国の指揮監督権の実効性確保の調和を図る制度であり、判決の効力も「行政機構内部において当該事項を執行すべきことが決定されたのと同様の効果」を生ずるにとどまる。このような行政内部の調整手段としての性質に鑑みれば、訴訟当事者(主務大臣・知事)以外の者が関与することは想定されていない。したがって、補助参加人として第三者が訴訟に参加することは、客観的訴訟としての本質に反すると評価される。
結論
職務執行命令訴訟には、その性質上、補助参加に関する規定を準用する余地はなく、参加申立ては却下されるべきである。
実務上の射程
客観的訴訟(機関訴訟等)における補助参加の可否が問われる場面で、本判決の「行政内部の意思決定過程の調整」という訴訟の性質論を援用する。行政事件訴訟法43条が民訴法の補助参加を準用している場合でも、訴訟の性質によって準用が否定される理論的根拠として重要である。
事件番号: 平成12(行フ)3 / 裁判年月日: 平成13年2月22日 / 結論: 破棄差戻
労働者災害補償保険法に基づく保険給付の不支給決定取消訴訟において,事業主は,その事業が労働保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項各号所定の一定規模以上の事業である場合には,労働基準監督署長を補助するため訴訟に参加することが許される。
事件番号: 昭和26(ク)144 / 裁判年月日: 昭和26年8月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が下した決定に対しては、更に抗告を申し立てることは法的に許されない。 第1 事案の概要:抗告人が、最高裁判所によって既になされた決定に対して、重ねて抗告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):最高裁判所がなした決定に対し、さらに抗告を申し立てることが許されるか(抗告の許容性)…
事件番号: 昭和28(し)76 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
論旨後段は、憲法の保障する公開裁判の原則に反すると主張するけれども、所論裁判長の命令は、要するに法廷における被告人、傍聴人に対して拍手等法廷秩序の妨害となるがごとき所為をなさざるよう予め注意を喚起するの趣旨に出でたもので、もとより当然の事理に属するところであつて、被告人らが右の命令に反する所為をしないかぎり、その在廷を…
事件番号: 昭和39(し)68 / 裁判年月日: 昭和40年2月9日 / 結論: 棄却
簡易裁判所がした、裁判の執行の異議申立を却下する決定に対し、特別抗告の申立があつても、右決定に対しては刑訴法第五〇四条により即時抗告をすることができるのであるから、直接最高裁判所に対しなされた右特別抗告は、刑訴法第四三三条第一項の要件を具えない不適法なものである。