何者かに殺害されたD関係労働組合の連合体の総務部長の合同葬に使用するためにされた市福祉会館の使用許可申請に対し、上尾市福祉会館設置及び管理条例(昭和四六年上尾市条例第二七号)六条一項一号が使用を許可しない事由として定める「会館の管理上支障があると認められるとき」に当たるとしてされた不許可処分は、右殺害事件についていわゆる内ゲバ事件ではないかとみて捜査が進められている旨の新聞報道があったとしても、右合同葬の際にまでその主催者と対立する者らの妨害による混乱が生ずるおそれがあるとは考え難い状況にあった上、警察の警備等によってもなお混乱を防止することができない特別な事情があったとはいえず、右会館の施設の物的構造等に照らせば、右会館を合同葬に使用することがその設置目的やその確立した運営方針に反するとはいえないなど判示の事情の下においては、「会館の管理上支障がある」との事態が生ずることが客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測されたものということはできず、違法というべきである。
何者かに殺害された労働組合幹部の合同葬に使用するためにされた市福祉会館の使用許可申請に対する不許可処分が違法とされた事例
地方自治法244条,上尾市福祉会館設置及び管理条例(昭和46年上尾市条例第27号)6条1項,憲法21条1項
判旨
公の施設の利用拒否が許されるのは、管理上の支障が客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に限られる。特に反対派の妨害による混乱を理由とする場合は、警察の警備等によってもなお混乱を防止できない特別な事情が必要である。
問題の所在(論点)
公の施設の管理者が、反対派の妨害による混乱や他の施設利用への影響を理由に利用を拒否することが、地方自治法244条2項の「正当な理由」に基づくものとして許容されるか。本件条例の不許可事由の解釈が問題となる。
規範
地方自治法244条2項の「正当な理由」に基づき公の施設の利用を拒絶し得る「管理上の支障」とは、許可権者の主観的予測ではなく、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合を指す。また、主催者に反対する者らの妨害により混乱が生ずるおそれがあることを理由とする拒絶は、警察の警備等によってもなお混乱を防止することができないなど、特別な事情がある場合に限られる。
重要事実
労働組合連合体である上告人が、殺害された役員の合同葬を行うため、上尾市福祉会館(本件会館)の大ホールの使用を申請した。市長(館長)は、殺害事件が内ゲバによる可能性があり、反対派の妨害による混乱が生じて同施設内の結婚式場の利用等に支障が出ることを懸念し、本件条例の「管理上支障があると認められるとき」に該当するとして不許可処分とした。実際には、利用予定日に結婚式の予約はなく、後に別会場で行われた合同葬では妨害は発生しなかった。
あてはめ
まず、妨害の予測については、新聞報道により内ゲバの可能性が報じられていたとしても、合同葬の際に警察の警備等によっても防げないほどの混乱が生じる具体的・客観的な事実は認められず、特別な事情はない。次に、結婚式等への影響については、大ホールと他の施設は出入口が異なり、物理的な併存は可能である。また、不許可処分の時点で結婚式の予約は入っておらず、祝儀利用を葬儀利用に優先させる確固たる運営方針や運用も確認できない。したがって、設置目的に反するとまではいえず、管理上の支障が具体的に明らかに予測される状況にはなかったと評価される。
結論
本件不許可処分は、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される支障がないにもかかわらずなされたものであり、本件条例の解釈適用を誤った違法なものである。
実務上の射程
集会の自由を制限する行政処分の違憲・違法性を判断する際のリーディングケースである。答案では、単なる「おそれ」ではなく「具体的かつ明らかな予測」が必要であること、及び「警察警備による対応可能性」を検討すべきことを論じる際に引用する。また、多目的施設における葬儀と結婚式の並存可能性など、施設目的に照らした合理的な管理権行使の限界を検討する際にも有用である。
事件番号: 昭和53(オ)1443 / 裁判年月日: 昭和54年7月5日 / 結論: 棄却
(省略)