司法警察員による被疑者の留置は、司法警察員が、留置時において、捜査により収集した証拠資料を総合勘案して刑訴法二〇三条一項所定の留置の必要性を判断する上において、合理的根拠が客観的に欠如していることが明らかであるにもかかわらず、あえて留置したと認め得るような事情がある場合に限り、国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受ける。
司法警察員による被疑者の留置についての国家賠償法一条一項所定の違法性の判断基準
国家賠償法1条1項,刑訴法203条1項
判旨
司法警察員による被疑者の留置継続の適法性は、留置の必要性を判断する上で合理的根拠が客観的に欠如していることが明らかであるにもかかわらず、あえて留置したと認められる場合に限り否定される。被疑者が黙秘し、犯罪の動機や組織性の解明が未了であるなど、留置の必要性が消滅したことが客観的に明らかでない限り、国家賠償法上の違法は認められない。
問題の所在(論点)
司法警察員が被疑者の身元を実質的に把握した後も、黙秘や組織的背景の未解明を理由に送致期限まで留置を継続する行為は、国家賠償法1条1項の「違法」な職務執行に当たるか。
規範
司法警察員による被疑者の留置(刑訴法203条1項)が国家賠償法1条1項の適用上違法となるのは、留置の必要性(犯罪の嫌疑、逃亡・罪証隠滅のおそれ等)を判断する上で合理的根拠が客観的に欠如していることが明らかであるにもかかわらず、あえて留置したと認め得る事情がある場合に限られる。
重要事実
日本共産党から依頼を受けたDは、屋外広告物条例で禁止された防護柵にポスターを貼付したため、現行犯逮捕された。警察は翌日昼頃までにDの住所・氏名を特定したが、Dは取調べに対し人定事項を含め一切黙秘を継続した。また、Dは同種のポスター30枚を所持しており、組織的背景の解明も必要とされた。検察官送致までの48時間以内に釈放されなかったことにつき、Dの相続人らが不当な留置継続として国家賠償を請求した。
あてはめ
Dは当初から非協力的な態度を示し、逮捕後も一貫して人定事項を含め完全に黙秘していた。また、同種ポスターの大量所持から、犯行の規模、動機、組織性等を解明する必要性が依然として認められた。このような状況下では、釈放後にDが罪証隠滅を図るおそれが消滅したと断定できない。したがって、たとえ身元が一部判明していたとしても、留置の必要性の合理的根拠が客観的に欠如していたことが明らかであるとはいえず、送致時まで留置を継続したことに違法性はない。
結論
本件留置の継続には合理的根拠が欠如していたとはいえず、国家賠償法1条1項の違法性は認められない。
実務上の射程
逮捕・留置という身体拘束事案における国家賠償責任の判断枠組みとして重要である。公訴提起の判断(山中事件等)と同様の「合理的根拠の客観的欠如」という高い違法性閾値を、司法警察員の留置継続の判断にも適用した点に特徴がある。
事件番号: 昭和49(オ)1088 / 裁判年月日: 昭和53年7月10日 / 結論: 破棄差戻
一 捜査機関は、弁護人から被疑者との接見の申出があつたときは、原則として何時でも接見の機会を与えるべきであり、現に被疑者を取調中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせる必要があるなど捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人と協議してできる限り速やかな接見のための日時等を指定し、被疑者が防禦のため弁護人と打ち合せる…
事件番号: 平成5(オ)1485 / 裁判年月日: 平成12年3月17日 / 結論: 棄却
弁護人が警察署に赴き勾留中の被疑者との接見の申出をしたのに対し、申出を受けた留置主任官が、接見の日時等を指定する権限のある検察官から被疑者と弁護人との接見についていわゆる一般的指定書が送付されていたのに弁護人が具体的指定書を所持していなかったので、右検察官に連絡して指示を受けるために三度にわたり検察庁に電話をしたが、右…