公職選挙法(平成四年法律第九七号による改正前のもの)一三条一項、別表第一、附則七ないし一〇項の衆議院議員の議員定数配分規定は、平成二年二月一八日施行の衆議院議員選挙当時、憲法一四条一項に違反していたものと断定することはできない。 (意見及び反対意見がある。)
公職選挙法(平成四年法律第九七号による改正前のもの)一三条一項、別表第一、附則七ないし一〇項の衆議院議員の議員定数配分規定の合憲性
憲法14条1項,公職選挙法(平成4年法律第97号による改正前のもの)13条1項,公職選挙法(平成4年法律第97号による改正前のもの)附則7ないし10項,公職選挙法(平成4年法律第97号による改正前のもの)別表第1
判旨
衆議院議員定数配分規定による一票の格差が1対3.18に達していたとしても、前回の是正から約3年7か月という期間や人口動態の予測困難性を考慮すれば、合理的期間内に是正がなされなかったとは断定できず、直ちに違憲とはいえない。
問題の所在(論点)
議員定数配分規定に基づく投票価値の不平等が憲法14条1項の要求に反する程度に達しているか、及び、その是正のための「合理的期間」を経過したといえるか。
規範
1. 憲法14条1項は投票価値の平等を要求するが、選挙制度の具体的内容は国会の広い裁量に委ねられる。2. 定数配分規定が合憲とされるためには、格差が国会の裁量権の合理的行使として是認できる範囲内にあることが必要である。3. 人口異動により較差が拡大し、憲法の要求に反する程度に至った場合でも、直ちに違憲となるわけではなく、合理的期間内に是正が行われない場合に初めて違憲となる。
重要事実
平成2年2月施行の衆議院議員総選挙において、昭和61年の定数改正(8増7減)により一時1対2.92まで縮小した一票の格差が、その後の人口移動によって最大1対3.18まで拡大していた。前回の改正から本件選挙までは約3年7か月、昭和60年国勢調査の確定値公表からは約3年3か月が経過していた。また、衆議院は改正時に「速やかな抜本改正」を期する決議を行っていた。
あてはめ
1. 最大格差1対3.18という不平等状態は、通常考慮し得る諸般の要素を斟酌しても正当化できず、憲法の平等の要求に反する程度(違憲状態)に至っていた。2. しかし、合理的期間の成否については、人口移動は絶えず生じ、頻繁な改正は政治的安定を欠く。3. 本件では、昭和61年改正から約3年7か月しか経過しておらず、その格差(1対3.18)も改正直後の数値(1対2.92)と著しく懸隔があるわけではない。衆議院の「抜本改正」決議は政治的意思表明に留まり、法的判断を左右しない。したがって、是正のための合理的期間を経過したとは断定できない。
結論
本件定数配分規定は、本件選挙当時、憲法14条1項の要求に反する状態にあったが、合理的期間を経過していないため、憲法に違反するとまではいえない。
実務上の射程
衆議院選挙における「1対3」の基準を実質的に維持しつつ、「合理的期間」の判断において立法府の政治的安定性や準備期間を尊重する枠組みを示した。答案上は、格差の程度(違憲状態の有無)と、是正期間(合理的期間の徒過)を二段階で論じる必要がある。
事件番号: 昭和56(行ツ)57 / 裁判年月日: 昭和58年11月7日 / 結論: 破棄自判
公職選挙法一三条、同法別表第一及び同法附則七項ないし九項による選挙区及び議員数の定めは、昭和五五年六月二二日の衆議院議員選挙当時、憲法一四条一項、一五条一項、三項、四四条但し書に違反していたものと断定することはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)