民法九〇〇条四号ただし書前段は、憲法一四条一項に違反しない。 (補足意見及び反対意見がある。)
民法九〇〇条四号ただし書前段と憲法一四条一項
憲法14条1項,民法900条
判旨
非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条4号ただし書(当時)は、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図るものであり、立法府の裁量権の範囲内として憲法14条1項に違反しない。相続制度の構築は各国の伝統や社会情勢を反映するものであり、補充的規定である法定相続分の定めにおいて差別が生じることには合理的根拠が認められる。
問題の所在(論点)
非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1と定める民法900条4号ただし書(当時)が、法の下の平等を定める憲法14条1項に違反するか。
規範
憲法14条1項は合理的理由のない差別を禁止するが、事実関係上の差異に基づく区別が合理性を有する限り違憲ではない。特に相続制度は国の伝統、社会事情、家族観と密接に関係するため、その具体的な内容は立法府の合理的な裁量判断に委ねられる。区別に合理的根拠があり、かつその区別が立法理由との関連で著しく不合理でない限り、裁量の限界を超えず合憲である。
重要事実
被相続人丙田マサの遺産分割において、婚姻によらない関係で出生した子(非嫡出子)の相続人らが、嫡出子の2分の1とする民法900条4号ただし書(本件規定)の適用を憲法14条1項違反であると主張して争った事案である。本件規定は昭和22年の改正以降維持されており、法律婚主義を前提とした嫡出子の尊重と非嫡出子の保護の調整を目的としていた。
事件番号: 平成20(ク)1193 / 裁判年月日: 平成21年9月30日 / 結論: 棄却
民法900条4号ただし書前段は,憲法14条1項に違反しない。 (補足意見及び反対意見がある。)
あてはめ
民法は法律婚主義(739条1項)及び一夫一婦制(732条)を採用しており、これは憲法上許容される。本件規定は、法律婚の尊重と、非嫡出子に一定の相続分を与えて保護するという両者の調整を図るものであり、立法目的に合理的根拠がある。また、法定相続分は遺言等がない場合の補充的規定にすぎず、遺産分割協議等での柔軟な解決も可能である。社会情勢の変化に伴い合理性に疑義が生じつつあるとしても、現時点において、非嫡出子の分を2分の1とすることが立法府の裁量権を著しく逸脱し不合理であるとまでは断定できない。
結論
民法900条4号ただし書は憲法14条1項に違反しないため、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
本判決は平成7年時点の合憲判断であるが、その後の社会情勢の変化により、平成25年大法廷決定によって「遅くとも平成13年当時において違憲」と判例変更がなされた。したがって、現在は違憲な規定として扱われる。本判決の論理(立法裁量論や補充的規定性の重視)は、依然として他の身分法上の差別規定を検討する際の比較対象として重要である。
事件番号: 平成24(ク)984 / 裁判年月日: 平成25年9月4日 / 結論: 破棄差戻
1 民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していた。 2 民法900条4号ただし書前段の規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとする最高裁判所の判断は,上記当時から同判断時までの間に開始された他の相続につき,同号ただし書前段の規定を前…
事件番号: 昭和39(ク)114 / 裁判年月日: 昭和41年3月2日 / 結論: 棄却
一 家事審判法第九条第一項乙類第一〇号の遺産の分割に関する処分の審判は、憲法第三二条、第八二条に違反しない。 二 家庭裁判所は、遺産の分割に関する処分の審判の前提となる相続権、相続財産等の権利関係の存否を、右審判中で、審理判断することができる。
事件番号: 昭和59(ク)100 / 裁判年月日: 昭和59年10月4日 / 結論: 棄却
遺産の分割に関する処分の審判に対する抗告審の決定は、当事者の審尋を経ないでされても、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 平成16(オ)992 / 裁判年月日: 平成16年10月14日 / 結論: 棄却
民法900条4号ただし書前段は,憲法14条1項に違反しない。 (補足意見及び反対意見がある。)