約束手形の振出人に対する満期前の手形金請求訴訟の提起ないし訴状の送達は、裏書人に対する満期後の遡求権行使の要件である支払のための呈示としての効力を有しない。
約束手形の振出人に対する満期前の手形金請求訴訟の提起ないし訴状の送達と遡求権行使の要件である支払のための呈示としての効力の有無
手形法43条,手形法77条1項4号
判旨
約束手形の振出人に対し、満期前に将来の給付の訴えを提起し口頭弁論終結前に満期が到来した場合であっても、裏書人への遡求権行使には支払呈示期間内に振出人への支払呈示が必要であり、訴訟提起等はこれに当たらない。
問題の所在(論点)
振出人に対する将来の給付の訴えとしての訴訟提起ないし訴状の送達が、裏書人に対する遡求権行使の要件である「支払呈示」としての効力を有するか。特に、口頭弁論終結前に満期が到来した場合の有効性が問題となる。
規範
裏書人に対する遡求権行使の要件(手形法43条、77条1項4号)としての支払呈示は、支払呈示期間内に支払場所においてなされる必要がある。その趣旨は、振出人に所持人が正当な権利者であることを確知させるとともに、振出人によって支払がされるか否かを明らかにさせる点にある。したがって、振出人に対する支払呈示がない限り、訴訟提起等をもってこれに代えることはできない。
重要事実
約束手形の所持人が、振出人に対し満期前に将来の給付の訴えとして手形金請求訴訟を提起した。当該訴訟の口頭弁論終結前に満期が到来したが、所持人は裏書人に対する遡求権行使の前提として、支払呈示期間内に支払場所において振出人に対する現実の支払呈示を行わなかった。
あてはめ
本件では、満期前に訴訟が提起されているが、支払呈示の趣旨である「振出人に正当な所持人であることを確知させ、支払の有無を明らかにさせる必要性」は、将来の給付の訴えにおいて口頭弁論終結前に満期が到来した場合であっても失われない。本件訴訟の提起や訴状の送達は、支払場所における現実の呈示を伴うものではなく、支払呈示としての効力を認めることはできない。よって、適法な支払呈示がなされたとはいえない。
結論
振出人に対する訴訟提起等は支払呈示としての効力を有しないため、遡求権行使の要件を欠き、裏書人に対する請求は認められない。
実務上の射程
遡求権保全のための支払呈示の厳格性を再確認した判例である。振出人に対する将来の給付の訴えが係属中であっても、満期が到来した際には別途、支払場所での呈示(または呈示免除の事実)が必要となる。答案上は、遡求の要件検討において「呈示の有無」が争点となる際に、訴訟提起の事実があっても呈示に代えられないとする規範として活用する。
事件番号: 昭和38(オ)242 / 裁判年月日: 昭和40年1月19日 / 結論: 棄却
約束手形の善意取得者は支払呈示期間内に手形の呈示をしなければ振出人に対する手形請求権を失うと解しなければならない理はない。