家庭裁判所において請求異議の訴えが適法に損害賠償請求の訴えに交換的に変更された場合には、民訴法三〇条一項により、新訴を管轄裁判所に移送すべきである。
家庭裁判所において請求異議の訴えが適法に損害賠償請求の訴えに交換的に変更された場合と新訴の取扱い
民訴法30条1項,民訴法232条,民事執行法33条2項,民事執行法35条
判旨
家庭裁判所で審理される請求異議の訴えにつき、不法行為に基づく損害賠償請求の訴えへの交換的変更が申し立てられた場合、家庭裁判所は受訴裁判所としてその変更を許した上、新訴が管轄外であれば管轄裁判所へ移送すべきである。
問題の所在(論点)
家庭裁判所に提起された請求異議の訴えから、家庭裁判所の管轄に属さない民事訴訟(損害賠償請求等)への交換的変更の申し立てがあった場合、裁判所はどのように処理すべきか。管轄違いを理由に訴えの変更を不許可とし、旧訴を却下すべきか、あるいは変更を認めた上で移送すべきかが問題となる。
規範
家庭裁判所における請求異議の訴えの審理は民事訴訟の手続によって行われる。したがって、同訴えの審理中に訴えの交換的変更(民訴法143条)が申し立てられた場合、家庭裁判所は受訴裁判所としてその許否を決める権限を有する。訴えの変更の要件を満たす場合にはこれを許可し、変更後の新訴が家庭裁判所の管轄に属さないときは、管轄違いを理由として直ちに却下するのではなく、民訴法16条1項により管轄裁判所に移送すべきである。
重要事実
上告人は、家庭裁判所の審判に基づき開始された債権差押命令の執行不許を求め、同家裁支部に請求異議の訴えを提起した。しかし、第一回口頭弁論前に取立てが完了し執行手続が終了したため、上告人は同支部に対し、不法行為に基づく損害賠償請求の訴えへの交換的変更を申し立てた。相手方はこれに同意して応訴したが、第一審および原審は、新訴が家裁の管轄外であることを理由に変更を不適法として許さず、旧訴についても訴えの利益を欠くとして却下した。
あてはめ
本件における請求異議の訴えは、家事審判を債務名義とするものであり家裁の管轄に属する。一方、変更後の損害賠償請求は地方裁判所の管轄に属する事件である。しかし、請求異議の訴えの審理が民事訴訟手続による以上、受訴裁判所は訴えの変更の許否を判断でき、本件では相手方の同意もあって変更の要件を欠くところはない。そうであれば、家裁は変更を許可した上で、管轄権を有する地方裁判所へ本案を移送すべきであって、変更自体を不適法として旧訴を却下した原審の判断は民訴法143条(旧232条)および16条1項(旧30条1項)の解釈を誤ったものである。
結論
家庭裁判所は訴えの変更を許可した上で、新訴について管轄権を有する地方裁判所に事件を移送すべきである。
実務上の射程
管轄を異にする訴えの変更がなされた場合の処理基準を示す。受訴裁判所に変更後の訴えの管轄がない場合でも、変更の要件(請求の基礎の同一性等)を満たす限り、変更を認めた上で移送によって処理すべきという一般原則が、家庭裁判所を起点とする手続にも妥当することを明示した点に意義がある。
事件番号: 昭和57(オ)1081 / 裁判年月日: 昭和58年2月17日 / 結論: 棄却
競売法三二条によつて準用される民訴法(昭和五四年法律第四号による改正前のもの)六八七条によつて発せられた不動産引渡命令に対し、右命令の相手方より、その執行の排除を求めるため、請求異議の訴えを提起することは許されない。