第一審判決の量刑軽きにすぎるとして検察官から控訴の申立がなされた事件において、控訴審が右量刑の点のみについて判断し、第一審判決を破棄して自判する場合には、第一審において弁護人からなされた心神耗弱の主張については判断を加えなくても違法ではない。
控訴審が検察官の量刑不当を理由とする控訴趣意を認めて第一審判決を破棄し自判する場合と第一審における心神耗弱の主張に対する判断の要否。
刑訴法355条2項,刑法39条2項
判旨
検察官のみが量刑不当を理由に控訴し、被告人が控訴していない場合、控訴審が量刑の点のみを判断し、第一審が否定した心神耗弱の点について判断しなかったとしても違法ではない。
問題の所在(論点)
検察官のみが量刑不当を理由に控訴し、被告人が控訴していない場合において、控訴審が第一審で否定された心神耗弱の成否について判断しないことは、審理不尽等の違法にあたるか。
規範
控訴審における審判の範囲は、控訴趣意書に記載された控訴理由(刑訴法382条、381条等)の存否に限定される。控訴がなかった事項や、当事者が争わなかった事項については、裁判所の職権調査権(392条2項)の行使が強制されるものではなく、審理しなかったとしても直ちに違法とはならない。
重要事実
被告人が心神耗弱の状態になかったと認定した第一審判決に対し、検察官が量刑不当を理由に控訴を申し立てた。一方で被告人側は第一審判決に対して控訴をしていなかった。原審(控訴審)は検察官の控訴趣意に基づき量刑の点のみを判断し、被告人の心神耗弱の成否については判断を示さなかった。
あてはめ
本件は量刑不当を理由とする検察官控訴の事件であり、被告人側は第一審の責任能力(心神耗弱否定)の判断について控訴していない。控訴審の構造は事後審的性格を有するため、審判対象は原則として控訴趣意に限定される。したがって、原審が検察官の主張する量刑の点のみを審理し、被告人が争わなかった責任能力の点について判断を加えなかったとしても、審理手続に違法は認められない。
結論
原審が量刑の点のみにつき判断し、被告人の心神耗弱の点について判断しなかったことは、何ら違法ではない。
実務上の射程
検察官控訴における審判範囲の限定を示す。被告人が控訴せず、検察官のみが控訴した場合、控訴趣意に含まれない事実誤認(責任能力の判断等)について控訴審は判断の義務を負わないという、事後審構造に基づく実務上の原則を裏付けるものである。
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